会計マスター
簿記3級11

試算表・精算表を速く解く下書き術。T字メモと集計のコツで計算を安定させる

下書きは「きれいさ」より「速さと読み返しやすさ」

試算表や精算表の問題で時間が足りなくなる人の多くは、知識不足ではなく下書きに原因があります。仕訳をすべて丁寧に書いてから集計する方法は確実に見えますが、書く量が多く、集計時に自分の字を探し回ることになりがちです。

下書きの目的は、採点者に見せることではなく、自分が集計するときに迷わないことです。この記事では、3級の集計問題で定番とされるT字メモを中心に、速くて読み返しやすい下書きの作り方を紹介します。

基本はT字メモ(略式のT勘定)

T字メモとは、勘定科目ごとにアルファベットのTの形を書き、左に借方の金額、右に貸方の金額をメモしていく方法です。仕訳を文章のように書き並べる代わりに、金額を科目ごとの置き場に直接振り分けていきます。

下書きの方法長所短所
仕訳をすべて書き出す確実で見直しやすい書く量と集計の手間が多い
T字メモ集計が速い。科目ごとに金額がまとまる慣れるまで練習が必要
頭の中だけで処理最速ミスに気づけず危険

最初からT字メモだけで解く必要はありません。学習初期は仕訳をフルで書き、慣れてきたら「動きの多い科目だけT字にする」という段階を踏むのが現実的です。最終的には、現金や売掛金・買掛金のような取引量の多い科目をT字で処理できると、解答時間が大きく縮まります。

T字メモを速くする5つのコツ

  • 科目名は略す。売掛金は「売×」、買掛金は「買×」、普通預金は「普」など、自分ルールの略記を決めておきます
  • 金額は千円単位などに省略しない。桁の書き間違いは致命傷になるため、数字だけは省略せずに書きます
  • Tの上に科目名、期首・前期繰越の残高があれば最初に書き込んでおく
  • 仕訳の相手科目はメモしない。集計に必要なのは自分の側の金額だけです
  • 集計が終わった数字には斜線やチェックを付け、二重集計を防ぐ

とくに最後のチェック印は効果が大きい習慣です。集計漏れと二重集計は、下書きが読み返しやすければほぼ防げます。

集計は「電卓の打ち方」までが下書き術

T字メモがきれいに書けても、集計で打ち間違えては意味がありません。集計時の電卓運用もセットで型にしましょう。

T字メモから解答欄へ転記するまでの手順
  1. 1T字の左側(借方)を上から順に電卓で合計する
  2. 2右側(貸方)も同様に合計し、差額で残高を出す
  3. 3桁の大きい科目は2回計算して一致を確認する
  4. 4残高をTの下に書き、解答欄へ転記する
  5. 5転記した直後に下書きと解答欄を突き合わせる

途中の合計をいちいち紙に書かず、電卓のメモリー機能でまとめて処理できるようになると、さらに速くなります。電卓の練習も下書き術の一部と考えてください。

なお、借方と貸方の合計が一致しないときは、差額に注目すると原因を早く見つけられます。差額が特定の取引の金額と一致していれば転記漏れ、差額が9で割り切れる場合は桁の入れ替え(たとえば123を132と書くミス)の可能性がある、というのは実務でも使われる古典的な探し方です。やみくもに最初から数え直す前に、まず差額の性質を観察しましょう。

精算表では「行ごとに完結」させる

精算表の問題では、下書きで整理仕訳を切ったら、その仕訳に関係する行だけを修正記入欄に書き込み、その行を損益計算書欄か貸借対照表欄まで横に完成させてしまう方法が有効です。全部の仕訳を書き終えてからまとめて記入する方法に比べ、書き込み漏れが起きにくく、部分点も確保しやすくなります。

一方、売上原価の算定のように複数の行が絡む論点は、あわてて横に流さず、仕入と繰越商品の2行をセットで処理します。ここは3級の精算表で最も間違えやすい箇所なので、解き方があいまいな方は教材記事の決算整理の単元で確認しておきましょう。

下書き術は「同じ型の反復」でしか身につかない

下書きの方法は、知識として知っただけでは速くなりません。同じ型を繰り返して手に馴染ませることが唯一の近道です。試算表・精算表の問題を解くたびに、毎回同じ略記・同じ手順・同じチェック印を使ってください。3〜5問も繰り返せば、明らかに解答時間が変わってきます。また、本番がネット試験の場合は問題文に書き込めないため、下書き用紙だけで完結する練習をしておくと本番との落差がなくなります。演習量の確保には問題集を活用してください。

まとめ

試算表・精算表の攻略は、T字メモを軸にした下書きの型づくりに尽きます。科目名は略し、金額は省略せず、集計済みの数字にはチェックを付ける。電卓は2回計算とメモリー活用で守りを固め、精算表は行ごとに完結させる。どれも小さな工夫ですが、積み重なると解答時間が10分単位で変わります。次の演習から、まずは略記のルールとチェック印の2つだけでも取り入れてみてください。