会計マスター

計算力の鍛え方 — 毎日解く習慣とミスノートで得点を安定させる

公認会計士試験の合否を大きく左右するのが、財務会計論や管理会計論といった計算科目です。簿記の学習を経験した方ならわかるとおり、計算問題は「わかる」と「解ける」の間に大きな距離があります。この記事では、計算力を安定して得点に結びつけるためのトレーニング方法を紹介します。

計算力はスポーツの技術に近い

計算問題を解く力は、知識というより技術に近い性質を持っています。仕訳を切り、集計し、表を埋めるという一連の動作は、頭で理解しているだけでは本番で再現できません。ピアノや球技の練習と同じで、手を動かした量が習熟度に直結します。

だからこそ、計算科目には「まとめて週末に10時間」より「毎日1〜2時間」のほうが向いていると一般に言われます。間隔を空けずに手を動かし続けることで、解法が体に染み込み、思い出すコストが下がっていくためです。

毎日解く習慣を作る3つの工夫

毎日続けるのは簡単ではありません。習慣化のための工夫を3つ挙げます。

  • 時間と場所を固定する … 「朝食後の60分は総合問題」のように、いつ・どこで・何をやるかを決めておくと、意思の力に頼らず机に向かえます
  • ハードルを下げた最低ラインを決める … 忙しい日でも「仕訳問題を10問だけ」といった最低ラインを設定し、ゼロの日を作らないようにします
  • 同じ教材を回す … 毎回新しい問題を探すと準備で消耗します。答練や問題集など決まった教材を周回する形にすると、開始までの摩擦が減ります

スピードと正確性のトレードオフ

計算演習で必ず直面するのが、速さと正確さのバランスです。急げばミスが増え、丁寧にやれば時間が足りない。このトレードオフとどう付き合うかが、計算科目攻略の核心です。

一般に、学習の段階によって重視すべきポイントは変わります。

段階重視すること練習のしかた
習いたて正確性時間を気にせず、正しい手順を丁寧になぞる
定着期正確性を保ったまま反復同じ問題を繰り返し、手順を体に入れる
実戦期スピード制限時間を計り、本試験より少し短い時間で解く

順序が重要です。正確な手順が身につく前にスピードを追うと、雑な解き方が癖になってしまいます。逆に、実戦期に入っても時間を計らずに解いていると、本番の時間感覚が養われません。「まず正確に、それから速く」が原則です。

また、本試験ではすべての問題を解き切れないことも珍しくありません。「どの問題から手をつけるか」「捨てる問題を見極める」という判断力も、時間を計った演習の中でしか鍛えられないスキルです。

ミスノート — 失点をデータに変える

計算力を伸ばす上で、一般に効果的とされるのがミスノートです。間違えた問題について、「なぜ間違えたか」を記録しておくノートを指します。

ポイントは、問題を書き写すことではなく、ミスの原因を分類することです。たとえば次のような分類が考えられます。

  • 知識不足 … そもそも解き方を知らなかった
  • 手順ミス … 解き方は知っていたが、途中の処理を誤った
  • 転記・集計ミス … 電卓の打ち間違い、書き写しの誤り
  • 読み違い … 問題文の指示や資料の読み落とし

分類してみると、自分のミスに偏りがあることに気づくはずです。転記ミスが多いなら下書きの書き方を整える、読み違いが多いなら指示部分に印をつける習慣を作る、というように、原因ごとに対策が変わります。

ミスノートは週に一度など定期的に見返し、同じ原因のミスが減っているかを確認しましょう。失点が「悔しい記憶」から「改善のためのデータ」に変わります。

電卓と下書きも技術のうち

見落とされがちですが、電卓の操作と下書きの書き方も計算力の一部です。メモリー機能やGT機能を使えるかどうかで集計のスピードと正確性は変わりますし、下書きが整理されていれば見直しも速くなります。

下書きについては、後から見てどこに何を書いたかがわかるように、書く場所と順序を毎回そろえるのが基本です。たとえば「仕訳は左上から、集計表は右側に」と決めておけば、検算のときに迷いません。電卓も下書きも、本番で急に変えることはできません。演習の初期段階で自分なりの型を決め、毎日の演習でその型ごと反復していくことをおすすめします。

なお、電卓は左手で打つべきかという相談をよく見かけますが、利き手のままで合格している人も多く、無理に矯正する必要はないと言われます。持ち方よりも、同じ機種を使い続けてキー配置を体に覚え込ませることのほうが重要です。

まとめ

  • 計算力は技術であり、まとめて長時間よりも毎日手を動かすことで伸びやすいとされます
  • 時間と場所の固定、最低ラインの設定、教材の周回で習慣化のハードルを下げましょう
  • 「まず正確に、それから速く」の順序で、段階に応じて練習の重点を切り替えます
  • ミスノートで失点の原因を分類すれば、自分に合った対策が見えてきます

計算科目は、正しく練習すれば練習量に比例して安定していく科目です。日々の演習を積み重ねていきましょう。