会計マスター

理論科目の暗記術 — 忘れる前提で覚える勉強法

公認会計士試験には、財務会計論の理論分野、監査論、企業法など、暗記の比重が大きい科目が数多くあります。簿記の計算問題とは頭の使い方が違うため、「覚えても覚えても忘れてしまう」と悩む受験生は少なくありません。この記事では、理論科目の暗記を効率化するための考え方とテクニックを紹介します。

大前提 — 人は忘れる生き物である

まず押さえておきたいのは、「一度で覚えられないのは当たり前」ということです。心理学の古典的な研究以来、人の記憶は時間とともに急速に薄れていくことが繰り返し確認されています。覚えた直後から忘却は始まり、復習しなければ大部分が抜け落ちていきます。

つまり暗記の勝負は「いかに一度で覚えるか」ではなく、「いかに忘れる前に思い出す機会を作るか」で決まります。忘れることを責めるのではなく、忘れる前提でスケジュールを組むことが出発点です。

間隔反復 — 復習のタイミングを設計する

一般に効果的とされる復習法が「間隔反復」です。同じ内容を短期間に詰め込むより、間隔を空けて複数回復習するほうが記憶に残りやすい、という研究知見に基づく方法です。

具体的には、次のようなサイクルが目安になります。

回数タイミングの目安やること
1回目学習した当日その日の内容をざっと見返す
2回目翌日キーワードを思い出せるか確認
3回目1週間後白紙に要点を書き出してみる
4回目1か月後問題演習で定着を確認

日数はあくまで目安であり、厳密に守ることよりも「時間を空けて何度も戻ってくる」構造を作ることが大切です。単語カードアプリなど、復習タイミングを自動管理してくれるツールを使うのも一つの方法です。

理解が先、暗記は後

理論科目でやりがちな失敗が、「意味がわからないまま文章を丸暗記しようとする」ことです。丸暗記は忘れやすいうえ、少しひねった問われ方をされると対応できません。

一般に、記憶は既存の知識と結びつくほど定着しやすいとされます。そこで、次の順序を意識してみてください。

  • まず「なぜそういうルールになっているのか」という趣旨・理由を理解する
  • 次に、結論と理由を自分の言葉で説明できるようにする
  • 最後に、答案で使う正確な表現・キーワードを覚え込む

たとえば監査論の手続を覚えるときも、「何のためにその手続をするのか」がわかっていれば、細部を忘れても筋道から思い出せます。理解は暗記の土台であり、遠回りに見えて近道です。

キーワード法 — 全文暗記から要点暗記へ

論文式試験の答案は、模範解答の全文を再現する必要はありません。採点上重要なのは、論点ごとのキーワードと論理の流れだと一般に言われます。

そこで、テキストの重要論点を「キーワード3〜5個と結論」の形に圧縮して覚える方法が有効です。

  • 論点名を見たら、キーワードを口頭で言えるか試す
  • キーワードがそろったら、それをつないで文章に復元する練習をする
  • 復元した文章とテキストを見比べ、抜けた要素を確認する

全文を覚える負担に比べて圧倒的に軽く、応用も利きやすくなります。

音読と白紙再現 — 出力する暗記

読むだけの暗記は、わかったつもりになりやすい方法です。記憶研究では、思い出す練習、いわゆる「テスト効果」が定着に有効とされています。手軽にできる出力型の勉強として、次の二つをおすすめします。

音読は、目と口と耳を同時に使う学習法です。黙読より時間はかかりますが、企業法の条文趣旨や監査論の定義など、正確な言い回しを体に入れたいときに向いています。

白紙再現は、何も見ずに白紙へ論点の要点を書き出す方法です。書けなかった部分こそが自分の弱点であり、復習すべき箇所が一目でわかります。1論点5分程度でできるので、朝の勉強の最初に前日分を再現する、といった習慣にすると効果的です。

暗記はスキマ時間との相性が良い

計算演習には机と電卓が必要ですが、暗記は場所を選びません。通勤電車の中、昼休み、寝る前の10分。こうした細切れの時間は、キーワードの確認や単語カードアプリでの復習にぴったりです。

特におすすめなのが、寝る前の軽い復習です。一般に、記憶は睡眠中に整理・定着が進むとされており、就寝前に見た内容は比較的残りやすいと言われます。逆に、寝る直前までスマートフォンで別の情報を浴びると、せっかくの復習が薄まってしまいます。「寝る前の10分はその日の理論の見返し」と決めておくと、無理なく反復の回数を増やせます。

まとめ

  • 人は忘れる生き物であり、忘れる前提で復習のサイクルを設計することが暗記の出発点です
  • 間隔反復により、当日・翌日・1週間後・1か月後と間隔を空けて繰り返すのが目安です
  • 丸暗記より先に趣旨を理解し、そのうえでキーワードと正確な表現を覚えます
  • 音読や白紙再現といった出力型の勉強は、読むだけの学習より定着しやすいとされます

暗記は才能ではなく仕組みで決まる部分が大きい分野です。自分なりの復習サイクルを作り、淡々と回していきましょう。