📖 ケーススタディ — 物語で学ぶ会計
税金の洗礼 — 納付書は忘れた頃にやってくる
固定資産税の納付書、レジの中の「預かりもの」、そして法人税の中間納付。次々と現れる税金に美咲が立ち向かう物語。
一通の納付書
6月のある朝。ハコニワの郵便受けに、市役所からの分厚い封筒が届いていた。
「固定資産税納付書……遥さん、これって」
「あー、来たかー。お店の建物と土地にかかる税金ね。会社の名義にしたから、今年から会社が払うのよ」
金額は60,000円。美咲は仕訳帳を開いて、はたと手が止まった。
「税金って、何の科目なんですか? 仕入でも給料でもないし……」
さっそく宇野先生に電話すると、笑い声が返ってきた。
「固定資産税はね、租税公課という費用の科目で処理する。事業をやっていくうえで避けられないコストだからね。収入印紙を買ったときの印紙税も同じ科目だよ」
借方(左)
貸方(右)
「ついでに覚えておくといい。郵便局で収入印紙を買ったら、それも租税公課だ。印紙税という税金を、紙を買う形で納めているんだよ」
「切手は通信費で、印紙は租税公課……。見た目はそっくりなのに、科目は別なんですね」
「切手は郵便というサービスの対価、印紙は税金だからね」
呪文みたいな科目名だと思いながらも、美咲は初めての納税をやり遂げた。
レジの中の「預かりもの」
その週末。レジを締めながら、美咲はふと考え込んだ。この日、お客さんに食器を税込11,000円で売った。でも値札は10,000円。差額の1,000円は消費税だ。
「この1,000円って、ハコニワの売上……なんですか?」
「鋭いね」と、ちょうど店に寄った宇野先生が目を細めた。「その1,000円は、お客さんから預かっただけのお金だ。あとで国に納める。だから売上には含めず、仮受消費税という科目で分けて記録する。これを税抜方式というんだ」
借方(左)
貸方(右)
「逆に、ハコニワが仕入れで払った消費税は、仮払消費税。こちらは払いすぎの一時立替えみたいなものだね」
借方(左)
貸方(右)
「じゃあ、決算のときに仮受と仮払を相殺して、差額を未払消費税として納めるんですね。……あたしたち、税金の集金係もやってたんだ」
「そういうこと。だから消費税は、税抜方式ならお店のもうけの計算——損益には影響しない。預かって、立て替えて、差額を納める。それだけの話なんだ」
その夜、美咲はレジの売上票を見る目が少し変わった。表示価格の下の小さな「うち消費税」の一行が、急に意味を持って見えてくる。
法人税の中間納付
11月。今度は税務署から封筒が届いた。「法人税の中間申告」。前年度の税額をもとに、年度の途中でいわば前払いをする制度だという。納付額は60,000円。
「まだ今年の利益が確定してないのに払うんですか!?」
「だから科目も『仮』なんだ。仮払法人税等。決算で1年分の税額が確定したら精算するよ」
借方(左)
貸方(右)
そして翌年3月の決算。1年分の法人税・住民税・事業税が130,000円と計算された。中間で60,000円はすでに払ってある。残りの70,000円は、これから納める義務——負債だ。
借方(左)
貸方(右)
「中間納付の仮払いが、ここできれいに消えるんですね」
「そう。そして未払法人税等の70,000円は、決算日の翌日から2か月以内に申告して納める。納めたときに『未払法人税等/普通預金』の仕訳で負債が消えるわけだ。税金は種類ごとに扱いが違うから、表で整理しておくと迷わないよ」
租税公課で処理
- •固定資産税
- •収入印紙(印紙税)
- •払ったときに費用になる
専用の科目で処理
- •消費税は仮受・仮払で預かり管理
- •法人税等は仮払法人税等と未払法人税等で精算
- •売上や仕入と混ぜない
集金係の自覚
年度末、納付書のファイルはすっかり分厚くなった。
「税金っていっぱいあって大変ねえ」とのんきな遥さんに、美咲はファイルを掲げて言った。
「大変ですけど、仕組みが分かれば怖くないです。費用になる税金は租税公課、預かりものの消費税は仮受と仮払、法人税等は仮払いと未払いで精算。それぞれの居場所さえ覚えれば大丈夫。預かってるだけのお金を、うっかり売上だと思って使っちゃうほうがよっぽど怖いですから」
宇野先生がにやりと笑った。「経理担当の顔になってきたね」
この物語の学び
- 固定資産税や収入印紙は**租税公課(費用)**で処理する
- 消費税(税抜方式)は、受け取った分を仮受消費税、支払った分を仮払消費税とし、決算で相殺して差額を未払消費税とする。消費税は売上でも費用でもなく「預かりもの」
- 法人税等の中間納付は仮払法人税等。決算で税額が確定したら、中間納付分を差し引いた残りを**未払法人税等(負債)**として計上する
物語で流れをつかんだら、教材でルールを整理し、問題集で手を動かしてみましょう。
