会計マスター

📖 ケーススタディ — 物語で学ぶ会計

コピー機はリースで — 佐伯課長の『利子抜き法』講義

複合機の入替えで初めてリース契約に触れた拓海。借りているだけなのに資産計上? ファイナンス・リースの利子抜き法を巡る佐伯課長の講義が始まる。

「買ってないのに資産」の衝撃

株式会社アオバ商事の複合機が、ついに寿命を迎えた。総務部が選んだ後継機の導入方法は、購入ではなくリース。経理部に回ってきた契約書には、こうあった。

  • リース期間: 5年(中途解約不可)
  • リース料: 年額120,000円、毎年3月末に後払い
  • リース料総額: 600,000円
  • 見積現金購入価額: 540,000円

新卒1年目の拓海(たくみ)は、気楽に構えていた。

「レンタルみたいなものですよね。払うたびに費用にすればいいんじゃ……」

「そのつもりで処理したら、決算で作り直しよ」

経理課長の佐伯(さえき)は、ホワイトボードのペンを手に取った。講義開始の合図である。

リースには2種類ある

「リース取引は2つに分かれる。ファイナンス・リースオペレーティング・リース。今回の契約は、中途解約できず、リース料総額で機械の価値をほぼ全部払い切る。つまり実質的には、お金を借りて分割払いで買ったのと同じ。これがファイナンス・リースよ」

ファイナンス・リース

  • 中途解約できない
  • リース料でほぼ全額を回収される
  • 実質は借入れ+購入
  • リース資産・リース債務を計上する売買処理

オペレーティング・リース

  • ファイナンス・リース以外
  • 実質はレンタルに近い
  • 資産計上しない
  • 支払時に支払リース料(費用)で処理

「借りてるだけなのに、資産に計上するんですか」

形式より実質。5年間解約できずに使い倒して代金相当額を払うなら、それは経済的には自社の設備でしょう。だから貸借対照表に載せる。名前だけ『リース』でも、中身が購入なら購入として写す——会計の大原則よ」

総額600,000円の中身を分解する

「次。リース料総額600,000円と見積現金購入価額540,000円、この差60,000円は何だと思う?」

「一括で買えば540,000円のものを、5年待ってもらって600,000円払う……あ、利息ですか」

「正解。分割払いの上乗せ分、利息相当額ね。処理方法は2つあって、この利息をどう扱うかで分かれる」

リース料総額600,000円の内訳
元本(見積現金購入価額)540,000
利息相当額 60,000

利子込み法なら、総額600,000円をそのままリース資産・リース債務にする。利子抜き法なら、利息を除いた540,000円で計上して、利息は支払いのたびに費用にしていく。原則は利子抜き法。今回はこちらでいくわよ」

リース取引開始日の仕訳はこうなる。

開始日(利子抜き法): 利息を含めない540,000円で計上

借方(左)

リース資産540,000

貸方(右)

リース債務540,000

「お金は1円も動いていないのに、資産と負債が両方540,000円ずつ生まれた。設備を手に入れた事実と、これから払う義務を同時に記録したの」

1年目の支払日 — 120,000円を2つに割る

翌年3月末、最初のリース料120,000円を当座預金から支払った。拓海は素直に「リース債務 120,000」と書きかけて、ペンを止めた。債務は540,000円しかないのに、5回払ったら600,000円になってしまう。

「気づいたわね。払った120,000円の全部が元本の返済じゃない。利息相当額60,000円を5年で定額に配分すると、毎年12,000円。だから内訳は、元本108,000円と利息12,000円」

リース料の支払い: 元本の返済と支払利息に分ける

借方(左)

リース債務108,000
支払利息12,000
合計120,000

貸方(右)

当座預金120,000
合計120,000

「108,000円 × 5年で540,000円、12,000円 × 5年で60,000円。ぴったりですね」

「2級では利息は定額法で配分すればいい。住宅ローンと同じで、毎回の支払いには元本と利息が混ざっている——そう考えれば忘れないわよ」

決算日 — 自分の資産だから、償却する

同じ3月末は決算日でもある。佐伯課長は最後の仕上げを促した。

「リース資産は貸借対照表に載った固定資産。ということは、決算ですることは?」

「減価償却! 540,000円を、耐用年数……じゃなくてリース期間の5年で割って、108,000円」

決算日: リース期間5年・残存価額ゼロで償却

借方(左)

減価償却費108,000

貸方(右)

リース資産減価償却累計額108,000

「そう。所有権が移転しないファイナンス・リースは、リース期間で、残存価額ゼロで償却する。これで1年目の処理は完成。開始日、支払日、決算日——リースの仕訳はこの3つの場面で切る、と覚えなさい」

ちなみに営業部の日野(ひの)が使う営業車の一部は、短期のオペレーティング・リースだ。こちらの処理は拍子抜けするほど簡単で、支払時に費用を立てるだけである。

オペレーティング・リース: 支払時に費用処理のみ

借方(左)

支払リース料60,000

貸方(右)

当座預金60,000

「同じ『リース』の名前でこの落差……」

「だから最初の分類が命なの。契約書を読んで実質を見抜くまでが仕訳よ」

新しい複合機は、その日から快調に稼働している。貸借対照表の上でも、オフィスの隅でも。

この物語の学び

  • リース取引はファイナンス・リース(実質は購入、売買処理)とオペレーティング・リース(賃貸借処理)に分類する
  • ファイナンス・リースの原則は利子抜き法。見積現金購入価額でリース資産・リース債務を計上する
  • リース料の支払時は元本(リース債務の減少)と支払利息に分解する。2級では利息相当額を定額法で配分すればよい
  • 決算ではリース資産をリース期間・残存価額ゼロで減価償却する(所有権移転外の場合)
  • オペレーティング・リースは支払時に支払リース料で費用処理するだけ

物語で流れをつかんだら、教材でリース取引の処理を整理し、問題集で手を動かしてみましょう。