会計マスター

その他の債権債務を総整理 — 貸付金・前払金・仮払金の違いがスッキリわかる

簿記3級債権債務仕訳

簿記3級では、売掛金・買掛金のほかにも「あとでお金を受け取る権利(債権)」と「あとでお金を支払う義務(債務)」を表す勘定科目がたくさん登場します。名前が似ていて混同しやすい論点ですが、「どんな取引から生まれたのか」で区別するのがコツです。この記事でまとめて整理しましょう。

債権と債務はペアで覚える

その他の債権債務は、次のようにペアで整理すると覚えやすくなります。

債権(資産)債務(負債)発生する場面
貸付金借入金お金の貸し借り
未収入金未払金商品以外のものの売買
前払金前受金商品売買の手付金
立替金預り金一時的な立替え・預かり
仮払金仮受金内容や金額が未確定の入出金

債権はすべて資産、債務はすべて負債です。したがって「増えたら借方か貸方か」は、資産・負債のルールがそのまま使えます。

貸付金と借入金 — 利息の計算がポイント

お金を貸したときは貸付金(資産)、借りたときは借入金(負債)で処理します。

例: 取引先に100,000円を現金で貸し付けた

借方(左)

貸付金100,000

貸方(右)

現金100,000

利息の月割計算

貸付金・借入金では利息の計算がよく出題されます。利息は次の式で求めます。

利息 = 元本 × 年利率 × 貸付(借入)期間 ÷ 12か月

例えば、100,000円を年利率3%で8か月間貸し付けた場合の利息は、100,000円 × 3% × 8÷12 = 2,000円です。

利息の月割計算(元本100,000円・年利率3%を12か月で按分)
貸付期間 8か月分 2,000円
貸し付けていない 4か月分

例: 上記の貸付金100,000円を利息2,000円とともに現金で回収した

借方(左)

現金102,000
合計102,000

貸方(右)

貸付金100,000
受取利息2,000
合計102,000

貸す側の利息は受取利息(収益)、借りる側の利息は支払利息(費用)で処理します。

未収入金と未払金 — 「商品以外」がキーワード

商品を掛けで売買したときは売掛金・買掛金を使いますが、商品以外のもの(土地、備品、車両など)を後払いで売買したときは、未収入金・未払金を使います。

例: 備品80,000円を購入し、代金は月末に支払うことにした

借方(左)

備品80,000

貸方(右)

未払金80,000

備品は商品ではないので、買掛金ではなく未払金です。同じ「後払い」でも、本業の商品売買かそれ以外かで科目が変わる点が試験で狙われます。

商品の後払い売買

  • 売掛金(資産)
  • 買掛金(負債)

商品以外(土地・備品など)の後払い売買

  • 未収入金(資産)
  • 未払金(負債)

前払金と前受金 — 手付金の処理

商品の受け渡しの前に代金の一部を支払ったり受け取ったりすることがあります。これが手付金(内金)です。

  • 支払った側 … 前払金(資産)。商品を受け取る権利を表します。
  • 受け取った側 … 前受金(負債)。商品を引き渡す義務を表します。

例: 商品50,000円を注文し、手付金10,000円を現金で支払った

借方(左)

前払金10,000

貸方(右)

現金10,000

例: 後日その商品を受け取り、残額40,000円は掛けとした

借方(左)

仕入50,000
合計50,000

貸方(右)

前払金10,000
買掛金40,000
合計50,000

注文しただけでは仕入は計上しません。仕入や売上を計上するのは商品が動いたときです。

立替金と預り金 — 従業員がらみの取引

  • 立替金(資産) … 従業員や取引先が負担すべきお金を一時的に立て替えたとき。従業員に対するものは「従業員立替金」とすることもあります。
  • 預り金(負債) … 従業員などから一時的にお金を預かったとき。代表例が給料から天引きする所得税預り金社会保険料預り金です。

例: 給料200,000円のうち、所得税の源泉徴収額10,000円を差し引き、残額を現金で支給した

借方(左)

給料200,000
合計200,000

貸方(右)

所得税預り金10,000
現金190,000
合計200,000

給料は総額の200,000円で計上する点に注意しましょう。天引きした所得税は、後日会社が税務署に納付したときに預り金を取り崩します。

借方(左)

所得税預り金10,000

貸方(右)

現金10,000

仮払金と仮受金 — 内容が確定するまでの仮の科目

  • 仮払金(資産) … お金を支払ったが、内容や金額が確定していないとき。代表例は出張旅費の概算払いです。
  • 仮受金(負債) … お金を受け取ったが、内容が不明なとき。代表例は内容不明の振込みです。

例: 従業員の出張にあたり、旅費の概算額30,000円を現金で渡した

借方(左)

仮払金30,000

貸方(右)

現金30,000

例: 従業員が帰社し、旅費交通費は28,000円と判明、残額2,000円は現金で返金された

借方(左)

旅費交通費28,000
現金2,000
合計30,000

貸方(右)

仮払金30,000
合計30,000

内容が確定したら、仮払金・仮受金は必ず適切な科目に振り替えます。決算までに精算するのが原則です。

仮払金の処理の流れ(出張旅費の例)
  1. 1出張前: 概算額を仮払金(資産)で計上する
  2. 2出張後: 使った内容と金額が確定する
  3. 3確定した科目(旅費交通費など)へ振り替え、残額を精算する

受取商品券と差入保証金

最後に、単独で出てくる2つの科目を押さえましょう。

受取商品券(資産)は、商品を売り上げて自治体や他社が発行した商品券を受け取ったときに使います。後日、発行元に持ち込んで換金できる権利だからです。

例: 商品20,000円を売り上げ、代金として商品券を受け取った

借方(左)

受取商品券20,000

貸方(右)

売上20,000

差入保証金(資産)は、店舗や事務所を借りるときに差し入れる敷金・保証金を処理する科目です。退去時に返してもらえる権利なので資産になります。

例: 事務所の賃借にあたり、敷金100,000円を普通預金から支払った

借方(左)

差入保証金100,000

貸方(右)

普通預金100,000

敷金は費用ではなく資産である点がひっかけとして出題されます。なお、同時に支払う仲介手数料は支払手数料(費用)、家賃は支払家賃(費用)で処理します。

まとめ

  • 債権は資産、債務は負債。ペアで整理して覚える
  • 利息は「元本 × 年利率 × 月数 ÷ 12」の月割計算
  • 商品以外の後払い売買は未収入金・未払金(売掛金・買掛金と区別)
  • 手付金は前払金・前受金。仕入・売上の計上は商品が動いたとき
  • 給料は総額計上し、天引き分は預り金で処理
  • 内容未確定の入出金は仮払金・仮受金で仮処理し、確定後に振り替える
  • 受取商品券と敷金(差入保証金)は資産

似た者どうしの科目は、実際に仕訳を切って手で覚えるのが一番です。下の問題集で使い分けを確認してみましょう。

📚 試験で覚えるべき用語

未収入金
商品以外のもの(土地・備品など)を後払いで売却したときの債権を表す資産の勘定科目。商品売買の売掛金と区別する。
前払金
商品の注文時に支払った手付金を処理する資産の勘定科目。商品を受け取る権利を表す。
前受金
商品の手付金を受け取ったときの、商品を引き渡す義務を表す負債の勘定科目。
立替金
従業員や取引先が負担すべきお金を一時的に立て替えたときに使う資産の勘定科目。
預り金
給料から天引きした源泉所得税や社会保険料など、一時的に預かったお金を表す負債の勘定科目。後日納付時に取り崩す。
仮払金
出張旅費の概算払いなど、支払ったが内容や金額が未確定の支出を一時的に処理する資産の勘定科目。確定後に正しい科目へ振り替える。
仮受金
内容不明の入金を一時的に処理する負債の勘定科目。内容が判明したら適切な科目へ振り替える。
差入保証金
店舗や事務所を借りる際に差し入れる敷金・保証金を処理する資産の勘定科目。退去時に返還される権利なので費用にはしない。