固定資産と減価償却を基礎から — 取得原価・月割計算・期中売却まで一気に理解
建物や備品などの固定資産は、簿記3級の頻出論点です。特に減価償却は決算問題でほぼ毎回問われます。「取得原価に何を含めるか」「月割計算のやり方」「売却時の損益の出し方」の3つを押さえれば得点源になります。順番に見ていきましょう。
固定資産とは
固定資産とは、長期間にわたって営業のために使う資産のことです。簿記3級では次の4つが登場します。
| 勘定科目 | 例 |
|---|---|
| 建物 | 店舗、事務所、倉庫 |
| 備品 | パソコン、机、陳列棚 |
| 車両運搬具 | 営業用トラック、社用車 |
| 土地 | 店舗や駐車場の敷地 |
いずれも資産なので、取得したら借方に記入します。
取得原価には付随費用を含める
固定資産を買ったときの金額(取得原価)は、本体価格だけではありません。購入にともなって発生した付随費用も取得原価に含めます。
取得原価 = 購入代価 + 付随費用
付随費用の例は次のとおりです。
- 建物・土地 … 仲介手数料、登記料、整地費用
- 備品 … 引取運賃、据付費
- 車両運搬具 … 納車費用
例: 建物1,000,000円を購入し、仲介手数料50,000円とともに普通預金から支払った
借方(左)
貸方(右)
仲介手数料を支払手数料(費用)としないのがポイントです。付随費用は固定資産の金額に含めます。
減価償却 — 価値の減少を費用にする
建物や備品は、使っているうちに古くなって価値が下がります。この価値の減少分を決算で費用として計上する手続きが減価償却です。費用の科目は減価償却費を使います。なお、土地は使っても価値が減らないと考えるため、減価償却を行いません。
定額法による計算
簿記3級では、毎期同じ額を償却する定額法で計算します。
減価償却費(1年分)=(取得原価 − 残存価額)÷ 耐用年数
- 取得原価 … 買ったときの金額(付随費用込み)
- 残存価額 … 耐用年数が過ぎた後に残る価値。ゼロのことも多い
- 耐用年数 … 使用できると見積もった年数
例えば、取得原価600,000円、残存価額ゼロ、耐用年数6年の備品なら、1年分の減価償却費は600,000円 ÷ 6年 = 100,000円です。
記帳は間接法
3級では間接法で記帳します。固定資産の金額を直接減らすのではなく、減価償却累計額という科目に減少分を貯めていく方法です。
例: 決算につき、上記の備品について1年分の減価償却を行う
借方(左)
貸方(右)
帳簿上、備品は600,000円のまま残り、累計額が毎年100,000円ずつ増えていきます。取得原価から累計額を差し引いた金額(帳簿価額)が、その時点の固定資産の価値を表します。
備品減価償却累計額
月割計算
期中に取得した固定資産は、取得した月から決算月までの月数分だけ減価償却します。
減価償却費 = 1年分の減価償却費 × 使用月数 ÷ 12か月
例えば、会計期間が4月1日から3月31日の会社が10月1日に上記の備品を買った場合、10月から3月までの6か月分なので、100,000円 × 6÷12 = 50,000円となります。
固定資産の期中売却
使っていた固定資産を売ると、帳簿価額と売却価額の差から損益が生じます。
- 売却価額が帳簿価額より高い → 固定資産売却益(収益)
- 売却価額が帳簿価額より低い → 固定資産売却損(費用)
売却の仕訳では、固定資産(取得原価)と減価償却累計額の両方を帳簿から消します。
例: 取得原価600,000円、減価償却累計額300,000円の備品を250,000円で売却し、代金は月末に受け取ることにした
帳簿価額は600,000円 − 300,000円 = 300,000円。これを250,000円で売ったので、差額50,000円が売却損です。
借方(左)
貸方(右)
備品は商品ではないので、代金の未回収分は売掛金ではなく未収入金を使う点にも注意しましょう。なお、期首から売却日までの減価償却費を月割で計上してから売却損益を計算する問題も出題されます。
資本的支出と収益的支出
固定資産を使い始めた後の支出は、内容によって処理が変わります。
| 区分 | 内容 | 処理 |
|---|---|---|
| 資本的支出 | 改良(価値を高める、耐用年数を延ばす) | 固定資産の取得原価に加算 |
| 収益的支出 | 修繕(元の状態に戻す) | 修繕費(費用)で処理 |
例: 建物の改修を行い、代金500,000円を普通預金から支払った。うち400,000円は耐震補強(改良)、100,000円は壁の補修(修繕)である
借方(左)
貸方(右)
「改良なら資産、修繕なら費用」と覚えましょう。
資本的支出(改良)
- •価値を高める・耐用年数を延ばす
- •固定資産の取得原価に加算
収益的支出(修繕)
- •元の状態に戻す
- •修繕費(費用)で処理
固定資産台帳
固定資産台帳は、固定資産を1つずつ管理するための補助簿です。資産ごとに取得年月日、取得原価、耐用年数、期首の減価償却累計額、当期の減価償却費、帳簿価額(期末残高)などを記録します。試験では、台帳の空欄を埋めたり、台帳から決算仕訳を答えたりする形式で出題されるので、各欄の意味を理解しておきましょう。
まとめ
- 取得原価は「購入代価 + 付随費用」。手数料や運賃も資産に含める
- 定額法の減価償却費は「(取得原価 − 残存価額)÷ 耐用年数」。土地は償却しない
- 記帳は間接法。減価償却累計額に減少分を貯めていく
- 期中取得・期中売却は月割計算。「月数 ÷ 12」を掛ける
- 売却損益は「売却価額 − 帳簿価額」で計算する
- 改良は資本的支出(資産)、修繕は収益的支出(費用)
計算と仕訳がセットになる論点なので、手を動かして慣れるのが近道です。下の問題集で実際に解いてみましょう。
📚 試験で覚えるべき用語
- 取得原価
- 固定資産を取得したときの金額。購入代価に仲介手数料や引取運賃などの付随費用を加えて計算する。
- 減価償却
- 固定資産の価値の減少分を、耐用年数にわたって毎期の費用として配分する決算手続き。土地には行わない。
- 定額法
- 「(取得原価−残存価額)÷耐用年数」で毎期同額の減価償却費を計上する方法。期中取得の場合は月割計算する。
- 減価償却累計額
- 間接法の記帳で、これまでの減価償却費の合計を貯めていく評価勘定。固定資産の金額は直接減らさない。
- 帳簿価額
- 取得原価から減価償却累計額を差し引いた金額。その時点の固定資産の帳簿上の価値を表し、売却損益の計算基準になる。
- 固定資産売却損益
- 固定資産の売却価額と帳簿価額の差額。売却価額が高ければ固定資産売却益(収益)、低ければ固定資産売却損(費用)。
- 資本的支出
- 改良など、固定資産の価値を高めたり耐用年数を延ばしたりする支出。固定資産の取得原価に加算する。
- 収益的支出
- 破損箇所の修理など、固定資産を元の状態に戻すための支出。修繕費(費用)で処理する。
