決算整理と精算表がわかる — しーくり・くりしーから8桁精算表まで一気に整理
簿記3級の後半で必ずつまずくのが「決算整理」と「精算表」です。特に売上原価を計算する「しーくり・くりしー」の仕訳は、丸暗記だけではすぐに忘れてしまいます。この記事では、決算手続の全体像から主な決算整理仕訳、8桁精算表の仕組みまでを順番に解説します。
決算手続の流れ
決算とは、1年間の帳簿記録を整理して、経営成績と財政状態を明らかにする手続です。おおまかな流れは次のとおりです。
- 決算整理前の試算表を作成する(転記の正確性チェック)
- 決算整理仕訳を行う(帳簿の金額を実際の状態に合わせる)
- 帳簿を締め切る(収益・費用を損益勘定に振り替える)
- 損益計算書・貸借対照表を作成する
日々の記録だけでは、帳簿の金額と実際の状態にズレが生じます。そのズレを直すのが決算整理仕訳です。
主な決算整理事項の一覧
簿記3級で出題される決算整理事項は、おおむね次のとおりです。
| 決算整理事項 | 内容 |
|---|---|
| 売上原価の算定 | しーくり・くりしーの仕訳で売上原価を計算する |
| 貯蔵品への振替 | 未使用の切手・収入印紙を貯蔵品勘定へ振り替える |
| 当座借越の振替 | 当座預金の貸方残高を借入金(当座借越)勘定へ振り替える |
| 現金過不足の整理 | 原因不明の過不足を雑損・雑益へ振り替える |
| 貸倒引当金の設定 | 売掛金などの貸倒れに備えて引当金を計上する |
| 減価償却 | 建物や備品の価値の減少分を費用にする |
| 費用・収益の前払い・前受け・未払い・未収 | 当期分と次期分を正しく区切る |
この記事では、このうち上の4つを詳しく見ていきます。
売上原価の算定 — しーくり・くりしー
当期の利益を正しく計算するには、売上に対応する売上原価(売った商品の仕入原価)を求める必要があります。計算式は次のとおりです。
売上原価 = 期首商品棚卸高 + 当期仕入高 − 期末商品棚卸高
簿記3級では、この計算を仕入勘定の上で行うのが基本です。決算整理仕訳は2本セットで、「しーくり・くりしー」という語呂で覚えます。
1本目(しーくり)— 期首商品を仕入勘定へ
期首にあった商品(繰越商品勘定の残高)を、仕入勘定に加えます。
借方(左)
貸方(右)
2本目(くりしー)— 期末商品を仕入勘定から除く
期末に売れ残った商品を、仕入勘定から差し引いて繰越商品勘定へ移します。
借方(左)
貸方(右)
たとえば期首商品10,000円、当期仕入100,000円、期末商品20,000円なら、この2本の仕訳の後、仕入勘定の残高は 10,000+100,000−20,000=90,000円 となり、これがそのまま売上原価を表します。
仕入
「仕入・繰越商品(しーくり)、繰越商品・仕入(くりしー)」と、借方の科目を先に読む順番で覚えましょう。
貯蔵品への振替 — 未使用の切手・収入印紙
郵便切手は購入時に通信費、収入印紙は購入時に租税公課として費用処理します。しかし決算日に未使用分が残っていれば、それはまだ費用ではなく資産(貯蔵品)です。そこで未使用分を貯蔵品勘定へ振り替えます。
決算日に未使用の郵便切手3,000円が残っていた場合の仕訳は次のとおりです。
借方(左)
貸方(右)
未使用の収入印紙5,000円なら、貸方が租税公課になります。
借方(左)
貸方(右)
なお、翌期首にはこの逆仕訳(再振替仕訳)を行い、費用の勘定へ戻します。
当座借越の振替
当座借越契約を結んでいると、当座預金の残高を超えて小切手を振り出すことができます。その結果、決算日に当座預金勘定が貸方残高になっていることがあります。これは実質的に銀行からの借金なので、決算では負債の勘定へ振り替えます。
決算日に当座預金勘定が貸方残高50,000円だった場合の仕訳は次のとおりです。
借方(左)
貸方(右)
貸方の科目は、問題の指示により借入金勘定または当座借越勘定を使います。この仕訳も翌期首に再振替仕訳を行って元に戻します。
現金過不足の整理 — 雑損・雑益へ
期中に現金の実際有高と帳簿残高が合わないとき、差額はいったん現金過不足勘定で処理しておきます。決算日になっても原因が判明しない分は、**雑損(費用)または雑益(収益)**へ振り替えて現金過不足勘定を消します。
現金過不足勘定が借方残高2,000円(実際有高が不足していた)で、原因不明のままの場合は次のとおりです。
借方(左)
貸方(右)
逆に貸方残高(実際有高が多かった)で原因不明なら、雑益へ振り替えます。
借方(左)
貸方(右)
「不足のままなら損、多いままなら益」と整理すると迷いません。
8桁精算表の仕組み
精算表は、決算整理から財務諸表の作成までの流れを1枚で確認できる一覧表です。簿記3級で出題されるのは、金額欄が8列ある8桁精算表です。
| 欄 | 内容 |
|---|---|
| 残高試算表欄(借方・貸方) | 決算整理前の各勘定の残高 |
| 修正記入欄(借方・貸方) | 決算整理仕訳の金額 |
| 損益計算書欄(借方・貸方) | 収益・費用の勘定が集まる |
| 貸借対照表欄(借方・貸方) | 資産・負債・純資産の勘定が集まる |
作成の手順は次のとおりです。
- 残高試算表欄に決算整理前の残高を写す
- 決算整理仕訳を修正記入欄に記入する
- 残高試算表欄の金額に修正記入欄の金額を加減する(同じ側なら加算、反対側なら減算)
- 修正後の金額を、収益・費用の勘定は損益計算書欄へ、資産・負債・純資産の勘定は貸借対照表欄へ書き移す
- 損益計算書欄の貸借の差額が当期純利益(または当期純損失)となり、貸借対照表欄の差額と必ず一致する
たとえば収益が費用より大きければ当期純利益です。当期純利益は損益計算書欄では借方に、貸借対照表欄では貸方に記入され、これで両方の欄の貸借がそろいます。この「差額が両欄で一致する」仕組みが精算表の最大のチェックポイントです。
まとめ
- 決算整理仕訳は、帳簿の金額を実際の状態に合わせるための仕訳
- 売上原価は「しーくり・くりしー」の2本の仕訳で仕入勘定の上で計算する
- 未使用の切手・収入印紙は貯蔵品勘定へ、当座預金の貸方残高は借入金(当座借越)勘定へ振り替える
- 原因不明の現金過不足は雑損・雑益へ振り替える
- 8桁精算表は「残高試算表欄 → 修正記入欄 → 損益計算書欄・貸借対照表欄」の流れで作成し、当期純利益が両欄で一致する
決算整理は本試験の第3問で必ず出題される最重要テーマです。下の問題集で仕訳を1つずつ確実にしていきましょう。
📚 試験で覚えるべき用語
- 決算整理仕訳
- 決算日に帳簿の金額を実際の状態に合わせるために行う仕訳。売上原価の算定や貯蔵品への振替、経過勘定の計上などがある。
- 売上原価
- 当期に売り上げた商品の仕入原価。「期首商品棚卸高+当期仕入高−期末商品棚卸高」で計算する。
- 繰越商品
- 期首・期末に在庫として残っている商品を表す資産の勘定科目。決算整理の「しーくり・くりしー」で仕入勘定とやり取りする。
- 貯蔵品
- 決算日に未使用のまま残っている郵便切手や収入印紙を表す資産の勘定科目。決算で通信費・租税公課から振り替える。
- 当座借越
- 当座借越契約により当座預金の残高を超えて小切手を振り出した状態。決算で当座預金の貸方残高を借入金などの負債へ振り替える。
- 現金過不足
- 現金の実際有高と帳簿残高のズレを一時的に処理する勘定。決算まで原因が不明な分は雑損(費用)または雑益(収益)へ振り替える。
- 8桁精算表
- 残高試算表欄・修正記入欄・損益計算書欄・貸借対照表欄の各借方・貸方、計8列で決算の流れを1枚にまとめた表。当期純利益はP/L欄とB/S欄で一致する。
