手形の裏書・割引と債権譲渡 — 手形売却損と電子記録債権売却損を整理する
手形の裏書譲渡
約束手形は、満期日を待たずに活用することができます。その1つ目が裏書譲渡です。手形の裏面に署名して、仕入代金の支払いなどに充てる方法で、手形の権利が相手に移るため、受取手形を貸方に記入して減らします。
仕入先への買掛金100,000円の支払いのため、所有する約束手形を裏書譲渡した場合の仕訳は次のとおりです。
借方(左)
貸方(右)
裏書譲渡では現金の動きがないため、借方は支払いに充てた債務など、貸方は受取手形というシンプルな形になります。
なお、逆の立場で裏書された手形を受け取った側は、通常どおり受取手形の増加として処理します。たとえば売掛金の回収として裏書手形を受け取った場合は、借方が受取手形、貸方が売掛金です。誰が振り出した手形かに関係なく、手形を保有する権利を得たら受取手形と覚えておきましょう。
手形の割引
2つ目の活用方法が割引です。満期日前の手形を銀行に買い取ってもらい、資金化することをいいます。満期日までの利息に相当する割引料が差し引かれるため、受取額は額面より少なくなります。この差額は手形売却損という費用で処理します。
額面200,000円の約束手形を銀行で割り引き、割引料3,000円を差し引かれた残額が当座預金に入金された場合の仕訳です。
借方(左)
貸方(右)
割引料の金額は問題文で与えられる場合と、自分で計算する場合があります。計算する場合は、額面金額に年利率を掛け、さらに割引日数を365日で割った割合を掛けて求めます。たとえば額面365,000円の手形を年利率2パーセント、割引日数30日で割り引いた場合、割引料は365,000円に2パーセントを掛けた7,300円を365日で割り、30日分を掛けた600円になります。日数の数え間違いが失点の定番なので、割引日から満期日までを丁寧に数えましょう。
裏書譲渡
- •支払いに充てて手形の権利を移す
- •現金の動きはない
- •売却損は生じない
割引
- •銀行に買い取ってもらい資金化する
- •割引料を差し引かれる
- •差額は手形売却損
電子記録債権の譲渡
電子記録債権は、電子債権記録機関の記録によって発生・譲渡される、手形に代わる決済手段です。紙の手形と違って紛失や盗難のリスクがなく、必要な金額だけ分割して譲渡できるのが特徴です。仕訳の考え方は手形とほぼ同じで、支払いへの充当や割引に相当する譲渡ができます。
買掛金150,000円の支払いのため、電子記録債権の譲渡記録を行った場合の仕訳です。
借方(左)
貸方(右)
また、額面300,000円の電子記録債権を銀行へ295,000円で譲渡し、代金が当座預金に入金された場合、差額は電子記録債権売却損で処理します。
借方(左)
貸方(右)
売掛金の譲渡
売掛金も債権として第三者に譲渡できます。帳簿価額より低い金額で譲渡した場合の差額は債権売却損で処理します。
売掛金400,000円を390,000円で譲渡し、代金が当座預金に入金された場合の仕訳です。
借方(左)
貸方(右)
売掛金の譲渡は、実務ではファクタリングと呼ばれる資金調達の場面で登場します。譲渡価額が帳簿価額を下回るのは、譲渡先が回収リスクや手数料分を差し引くためです。
ここまでの売却損の科目を整理すると次のようになります。譲渡する債権の種類によって売却損の科目名が変わる点が最大の引っかけポイントです。損失の金額はいずれも、債権の帳簿価額(額面)から実際の受取額を差し引いて計算します。
| 譲渡する債権 | 差額の勘定科目 |
|---|---|
| 受取手形(割引) | 手形売却損 |
| 電子記録債権 | 電子記録債権売却損 |
| 売掛金 | 債権売却損 |
営業外受取手形・営業外支払手形
受取手形・支払手形は、商品売買という主たる営業取引から生じた手形に使う科目です。土地や備品など固定資産の売買で手形を受け取ったり振り出したりした場合は、営業外受取手形・営業外支払手形という別の科目を使います。
土地(帳簿価額500,000円)を600,000円で売却し、代金として約束手形を受け取った場合の仕訳です。
借方(左)
貸方(右)
逆に、備品250,000円を購入して約束手形を振り出した場合は、営業外支払手形を使います。
借方(左)
貸方(右)
| 手形が生じた取引 | 使う勘定科目 |
|---|---|
| 商品売買(主たる営業取引) | 受取手形・支払手形 |
| 固定資産の売買など営業外の取引 | 営業外受取手形・営業外支払手形 |
問題文で「商品」か「土地・建物・備品」かを読み取れば、どちらの科目かは機械的に判断できます。
まとめ
- 裏書譲渡は受取手形を貸方に記入して権利を相手に移す
- 割引の割引料は手形売却損、電子記録債権の譲渡差額は電子記録債権売却損、売掛金の譲渡差額は債権売却損
- 売却損の科目名は譲渡する債権の種類で決まる
- 固定資産の売買で生じた手形は営業外受取手形・営業外支払手形
科目の使い分けと差額計算がそのまま得点になる単元です。下の問題集で仕訳のパターンを繰り返し練習しましょう。
📚 試験で覚えるべき用語
- 裏書譲渡
- 所有する手形の裏面に署名し、仕入代金の支払いなどに充てて手形の権利を相手に移すこと。受取手形を貸方に記入する。
- 手形の割引
- 満期日前の手形を銀行に買い取ってもらい資金化すること。満期日までの利息に相当する割引料が差し引かれる。
- 手形売却損
- 手形を割り引いたときの割引料を処理する費用の勘定科目。額面金額と受取額の差額として計上する。
- 電子記録債権
- 電子債権記録機関の記録によって発生・譲渡される、手形に代わる決済手段。分割譲渡ができ、紛失・盗難のリスクがない。
- 電子記録債権売却損
- 電子記録債権を額面より低い金額で譲渡したときの差額を処理する費用の勘定科目。
- 債権売却損
- 売掛金を帳簿価額より低い金額で譲渡したときの差額を処理する費用の勘定科目。ファクタリングの場面で登場する。
- 営業外受取手形・営業外支払手形
- 土地や備品など固定資産の売買といった、主たる営業取引以外から生じた手形に使う勘定科目。商品売買の手形とは区別する。
