総合原価計算を完全マスター — 月末仕掛品の評価から仕損・減損まで
工業簿記の第4問・第5問で最も出題頻度が高い論点のひとつが総合原価計算です。計算パターンは決まっているので、手順さえ身につければ安定した得点源になります。この記事では月末仕掛品の評価を中心に、例題を使って一つずつ確認していきましょう。
総合原価計算とは
総合原価計算は、同じ種類の製品を連続して大量生産する工場で使われる原価計算の方法です。注文ごとに製造指図書を発行して原価を集計する個別原価計算と違い、1か月間の製造費用をまとめて集計し、それを完成品と月末仕掛品に配分します。
つまり総合原価計算の中心テーマは、当月の製造費用を完成品と月末仕掛品にどう配分するかという一点に尽きます。
材料費と加工費に分けて考える
配分の計算では、原価を次の2つに分けます。
| 区分 | 発生の仕方 | 月末仕掛品の数量 |
|---|---|---|
| 直接材料費 | 工程の始点で全量投入 | 実際の数量そのまま |
| 加工費 | 加工が進むにつれて発生 | 数量 × 加工進捗度(完成品換算量) |
材料が工程の始点で投入される場合、月末仕掛品にも完成品と同じだけ材料が含まれています。一方、加工費は作業の進み具合に応じて発生するため、進捗度50パーセントの仕掛品は「完成品0.5個分」とみなします。これを完成品換算量といいます。
材料費(始点投入)は数量のまま、加工費は数量×進捗度で換算する。ここが総合原価計算のすべての出発点です。
例題 — 月末仕掛品の評価
次の資料で、平均法と先入先出法それぞれの計算を確認します。材料はすべて工程の始点で投入しています。
| 項目 | 数量 | 直接材料費 | 加工費 |
|---|---|---|---|
| 月初仕掛品 | 200個(進捗度50パーセント) | 26,400円 | 20,600円 |
| 当月投入 | 1,000個 | 120,000円 | 153,000円 |
| 合計 | 1,200個 | 146,400円 | 173,600円 |
当月完成品は1,000個、月末仕掛品は200個(進捗度60パーセント)です。月末仕掛品の加工費の完成品換算量は 200個 × 60パーセント = 120個 となります。
平均法
- •月初仕掛品原価と当月製造費用を合算
- •平均単価で月末仕掛品を評価
先入先出法
- •月初仕掛品から先に完成すると考える
- •月末仕掛品はすべて当月投入分として当月単価で評価
平均法
平均法は、月初仕掛品原価と当月製造費用を合算して平均単価を求める方法です。
- 材料費の平均単価 = 146,400円 ÷(1,000個 + 200個)= 122円
- 加工費の平均単価 = 173,600円 ÷(1,000個 + 120個)= 155円
月末仕掛品原価は次のとおりです。
- 材料費分 = 200個 × 122円 = 24,400円
- 加工費分 = 120個 × 155円 = 18,600円
- 合計 = 43,000円
完成品総合原価 = 320,000円 − 43,000円 = 277,000円、完成品単位原価 = 277,000円 ÷ 1,000個 = 277円 となります。
仕掛品(平均法)
先入先出法
先入先出法は、月初仕掛品から先に完成すると考える方法です。したがって月末仕掛品はすべて当月投入分から構成され、当月の単価だけで評価します。
まず加工費の当月投入分の完成品換算量を求めます。
- 当月投入換算量 = 完成品1,000個 − 月初換算量100個(200個×50パーセント)+ 月末換算量120個 = 1,020個
単価と月末仕掛品原価は次のとおりです。
- 材料費 = 120,000円 ÷ 1,000個 = 120円 → 200個 × 120円 = 24,000円
- 加工費 = 153,000円 ÷ 1,020個 = 150円 → 120個 × 150円 = 18,000円
- 月末仕掛品原価 = 42,000円
完成品総合原価 = 320,000円 − 42,000円 = 278,000円、完成品単位原価は278円です。完成したら次の仕訳で製品勘定へ振り替えます。
借方(左)
貸方(右)
重要なのは、どちらの方法でも「完成品原価 = 総製造費用 − 月末仕掛品原価」という引き算で求める点です。月末仕掛品さえ正確に評価できれば、完成品原価は自動的に決まります。
工程別・組別・等級別総合原価計算
簿記2級では、生産形態に応じた3つの応用パターンも出題されます。
| 種類 | 適用される生産形態 | 計算のポイント |
|---|---|---|
| 工程別 | 複数の工程を経て生産 | 第1工程の完成品原価を「前工程費」として第2工程へ振り替える(前工程費は始点投入の材料費と同様に扱う) |
| 組別 | 異なる種類の製品を並行生産 | 組直接費は各組に賦課し、組間接費は配賦基準で各組に配賦する |
| 等級別 | 同種だがサイズ等が異なる製品 | 等価係数を使って積数(数量×等価係数)の比で完成品原価を按分する |
いずれも基本は単純総合原価計算の応用です。前工程費の扱いと積数による按分は、計算問題で特によく問われます。
正常仕損・減損の処理
生産の過程で不合格品(仕損)や蒸発などによる数量の目減り(減損)が生じることがあります。正常な範囲で発生したものは良品の原価に含めて処理し、簿記2級では度外視法(仕損品・減損の原価を独立に計算せず、自動的に良品へ負担させる方法)で計算します。
誰が負担するかは、仕損・減損の発生点と月末仕掛品の進捗度の比較で決まります。
- 発生点(検査点)が月末仕掛品の進捗度より後 … 月末仕掛品は検査を通過していない → 完成品のみ負担
- 発生点が月末仕掛品の進捗度より前、または工程を通じて平均的に発生 … 月末仕掛品も通過済み → 両者負担
仕損・減損の発生点と月末仕掛品の進捗度を比較して負担先を決める。この判断を問う問題は頻出です。両者負担の場合は、仕損・減損分の数量を計算上ないものとみなして(分母から除いて)単価を計算すれば、良品に自動的に負担されます。減損は仕損と違って形あるものが残らないだけで、計算方法はまったく同じです。
まとめ
- 総合原価計算は当月製造費用を完成品と月末仕掛品に配分する計算である
- 始点投入の材料費は数量のまま、加工費は数量×進捗度の完成品換算量で計算する
- 平均法は月初と当月を合算した平均単価、先入先出法は当月単価で月末仕掛品を評価する
- 完成品原価は総製造費用から月末仕掛品原価を差し引いて求める
- 正常仕損・減損は発生点と月末仕掛品の進捗度を比べ、完成品のみ負担か両者負担かを判断する
計算手順は毎回同じなので、反復練習が最大の近道です。下の問題集で平均法・先入先出法の計算を実際に手を動かして確認してみましょう。
📚 試験で覚えるべき用語
- 総合原価計算
- 同種製品を連続して大量生産する場合に、1か月間の製造費用をまとめて集計し、完成品と月末仕掛品に配分する原価計算の方法。
- 完成品換算量
- 仕掛品の数量に加工進捗度を掛けて、完成品何個分に相当するかを示した量。加工費の配分計算に使う。
- 平均法
- 月初仕掛品原価と当月製造費用を合算して平均単価を求め、その単価で月末仕掛品を評価する方法。
- 先入先出法
- 月初仕掛品から先に完成すると考える方法。月末仕掛品はすべて当月投入分とみなし、当月の単価で評価する。
- 前工程費
- 工程別総合原価計算で、第1工程の完成品原価を第2工程に振り替えたもの。始点投入の材料費と同様に扱う。
- 等価係数
- 等級別総合原価計算で製品間の原価負担の割合を示す係数。数量に掛けた積数の比で完成品原価を按分する。
- 度外視法
- 正常仕損・減損の原価を独立に計算せず、計算上ないものとみなして自動的に良品に負担させる方法。
- 減損
- 蒸発などにより工程中で数量が目減りすること。形あるものが残らない点が仕損と異なるが、計算方法は仕損と同じ。
