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製造業の決算と財務諸表 — 製造原価報告書から損益計算書までの流れをつかむ

簿記2級工業簿記製造原価報告書財務諸表

工業簿記で学んできた原価の流れは、決算で「製造原価報告書」という書類にまとめられ、損益計算書・貸借対照表へとつながっていきます。この記事では、製造業の決算で作成する財務諸表の構造と、数字のつながりを順番に解説します。ここが理解できると、勘定連絡図の全体像が一気にクリアになります。

製造原価報告書とは

製造原価報告書は、当期に完成した製品の原価(当期製品製造原価)がいくらで、どのような内訳だったかを報告する書類です。英語の頭文字からC/Rとも呼ばれます。構造は次の3段階で覚えましょう。

  1. 材料費・労務費・経費を集計して当期総製造費用を求める
  2. 当期総製造費用に期首仕掛品棚卸高を加える
  3. そこから期末仕掛品棚卸高を差し引いて当期製品製造原価を求める

具体例で確認します。

製造原価報告書金額
材料費(期首材料 50,000円 + 当期仕入 450,000円 − 期末材料 60,000円)440,000円
労務費300,000円
経費160,000円
当期総製造費用900,000円
期首仕掛品棚卸高120,000円
合計1,020,000円
期末仕掛品棚卸高150,000円
当期製品製造原価870,000円

***当期総製造費用は「当期に投入した原価」、当期製品製造原価は「当期に完成した製品の原価」***です。この2つの違いが仕掛品の増減であり、試験でも繰り返し問われます。仕掛品勘定をイメージすると、借方が期首仕掛品と当期総製造費用、貸方が当期製品製造原価と期末仕掛品、という対応関係になっています。

仕掛品

期首仕掛品120,000
当期総製造費用900,000
当期製品製造原価870,000
期末仕掛品150,000

なお、製造原価報告書の様式には、上の例のように材料費・労務費・経費という形態別に区分する様式と、製造直接費(直接材料費・直接労務費など)と製造間接費に区分する様式の2種類があります。どちらの様式でも当期総製造費用より下の計算はまったく同じなので、問題文で与えられた様式に落ち着いて当てはめましょう。

損益計算書とのつながり

製造原価報告書で求めた当期製品製造原価は、損益計算書の売上原価の計算に組み込まれます。商業簿記の「仕入」の位置に当期製品製造原価が入るイメージです。

  • 売上原価 = 期首製品棚卸高 + 当期製品製造原価 − 期末製品棚卸高

先ほどの例に、期首製品 100,000円、期末製品 130,000円を加えて計算すると次のようになります。

損益計算書(売上原価の区分)金額
期首製品棚卸高100,000円
当期製品製造原価870,000円
合計970,000円
期末製品棚卸高130,000円
売上原価840,000円

材料 → 仕掛品 → 製品 → 売上原価という原価の流れが、そのまま製造原価報告書から損益計算書への数字の流れになっていることを確認してください。

製造原価報告書から損益計算書への流れ
材料仕掛品製品売上原価

原価差異の売上原価への加減算

製造間接費を予定配賦している場合や、材料費・労務費に予定価格・予定賃率を使っている場合には、予定と実際のずれである原価差異が発生します。決算では、この原価差異を原則として売上原価に加減算して処理します

  • 不利差異(借方差異) … 実際が予定を上回った → 売上原価に加算
  • 有利差異(貸方差異) … 実際が予定を下回った → 売上原価から減算

不利差異(借方差異)

  • 実際が予定を上回った
  • 売上原価に加算

有利差異(貸方差異)

  • 実際が予定を下回った
  • 売上原価から減算

例えば、製造間接費の予定配賦額が 490,000円、実際発生額が 510,000円なら、差異は 20,000円の不利差異です。売上原価 840,000円に加算して、損益計算書上の売上原価は 860,000円になります。このときの振替の仕訳は次のとおりです。

借方(左)

売上原価20,000

貸方(右)

製造間接費配賦差異20,000

有利差異の場合は貸借が逆になり、売上原価が減ります。「不利は足す、有利は引く」と機械的に覚えるのではなく、実際にかかった原価に合わせるための修正だと理解しておくと迷いません。

なお、製造原価報告書側では実際発生額で集計した製造間接費を予定配賦額に修正するため、不利差異は減算、有利差異は加算と、損益計算書とは加減の向きが逆になる点に注意しましょう。

製造業の貸借対照表

製造業の貸借対照表では、商業の「商品」に代わって次の3つの棚卸資産が流動資産に表示されます。

  • 材料 … まだ製造に使っていない原材料
  • 仕掛品 … 製造の途中にある未完成品
  • 製品 … 完成して販売を待っている在庫

いずれも期末棚卸高が貸借対照表の金額になります。先ほどの例なら、期末材料 60,000円・期末仕掛品 150,000円・期末製品 130,000円が、それぞれ貸借対照表の資産として表示されます。製造原価報告書と損益計算書に登場した期末棚卸高が、そのまま貸借対照表に載るという対応関係も試験で問われるポイントです。3つの書類は独立した別物ではなく、1本の原価の流れを別の角度から切り取ったものだと意識しましょう。

まとめ

  • 製造原価報告書は、材料費・労務費・経費 → 当期総製造費用 → 当期製品製造原価という3段階の構造
  • 当期製品製造原価 = 当期総製造費用 + 期首仕掛品 − 期末仕掛品
  • 売上原価 = 期首製品 + 当期製品製造原価 − 期末製品
  • 原価差異は不利差異なら売上原価に加算、有利差異なら減算する
  • 材料・仕掛品・製品は貸借対照表の流動資産に表示される

決算の問題は、勘定連絡の流れを意識しながら数字を順番に埋めていけば必ず解けます。下の問題集で計算の型を固めておきましょう。

📚 試験で覚えるべき用語

製造原価報告書
当期に完成した製品の原価(当期製品製造原価)とその内訳を報告する書類。C/Rとも呼ばれる。
当期総製造費用
当期に製造のため投入した原価の合計。材料費・労務費・経費を合計して求める。
当期製品製造原価
当期に完成した製品の原価。当期総製造費用に期首仕掛品棚卸高を加え、期末仕掛品棚卸高を差し引いて求める。
売上原価(製造業)
期首製品棚卸高に当期製品製造原価を加え、期末製品棚卸高を差し引いて求める。商業簿記の仕入の位置に当期製品製造原価が入る。
原価差異
予定配賦額や予定価格と実際発生額とのずれ。決算では原則として売上原価に加減算して処理する。
不利差異(借方差異)
実際発生額が予定を上回ったときの差異。損益計算書では売上原価に加算する。
有利差異(貸方差異)
実際発生額が予定を下回ったときの差異。損益計算書では売上原価から減算する。