製造間接費の予定配賦と差異分析 — シュラッター図の考え方までやさしく解説
工業簿記の学習で最初の大きな山になるのが「製造間接費の予定配賦」です。予定配賦率の計算から配賦差異の分析までは、簿記2級の第4問・第5問で繰り返し出題される最重要テーマです。この記事では、数値例を使って一連の流れを解説します。
製造間接費とは
製造間接費とは、特定の製品にいくらかかったのかを直接たどれない原価のことです。工場建物の減価償却費、電力料、工場全体を管理する人の給料などが代表例です。
| 区分 | 内容 | 製品への集計方法 |
|---|---|---|
| 製造直接費 | 直接材料費・直接労務費など | 賦課(直課) |
| 製造間接費 | 間接材料費・間接労務費・間接経費 | 配賦 |
直接費は各製品にそのまま賦課できますが、間接費は何らかの基準を使って製品に割り当てる必要があります。この手続きを配賦といいます。
配賦基準と予定配賦
配賦に使うモノサシを配賦基準といい、次のようなものが使われます。
- 直接作業時間
- 機械運転時間
- 直接労務費
配賦基準は、その部門や工場で原価の発生と最も関係の深いものを選びます。機械化が進んだ工場なら機械運転時間、手作業が中心なら直接作業時間が適しています。
実際発生額を実際操業度で割って配賦する「実際配賦」には、月末まで配賦率が確定しない、月ごとに配賦率が変動してしまう、という欠点があります。そこで簿記2級では、***あらかじめ定めた予定配賦率を使って配賦する「予定配賦」***が中心になります。
予定配賦率と予定配賦額の計算
予定配賦率は次の式で求めます。
予定配賦率 = 製造間接費予算 ÷ 基準操業度
基準操業度とは、1年間に予定される操業度(直接作業時間や機械運転時間など)のことです。
【例】年間の製造間接費予算 6,000,000円、年間の基準操業度 12,000時間(直接作業時間)
- 予定配賦率 = 6,000,000円 ÷ 12,000時間 = 500円/時間
当月の実際直接作業時間が950時間なら、予定配賦額は次のとおりです。
- 予定配賦額 = 500円 × 950時間 = 475,000円
予定配賦額の計算に使うのは実際操業度です。基準操業度を掛けてしまう誤りが非常に多いので注意してください。
予定配賦したときは、製造間接費勘定から仕掛品勘定へ振り替えます。
借方(左)
貸方(右)
製造間接費配賦差異
当月の実際発生額が495,000円だったとします。予定配賦額との差額が製造間接費配賦差異です。
- 配賦差異 = 予定配賦額 475,000円 − 実際発生額 495,000円 = △20,000円
予定より実際が多くかかっているので**不利差異(借方差異)**です。仕訳は次のようになります。
借方(左)
貸方(右)
逆に実際発生額のほうが少なければ有利差異(貸方差異)となり、貸借が反対の仕訳になります。
製造間接費
公式法変動予算による差異分析
簿記2級では、配賦差異をさらに予算差異と操業度差異に分ける分析が出題されます。公式法変動予算では、製造間接費予算を変動費と固定費に分けて設定します。
【例】変動費率 200円/時間、月間固定費予算 300,000円、月間基準操業度 1,000時間、実際操業度 950時間、実際発生額 495,000円
まず固定費率と予定配賦率を確認します。
| 項目 | 計算 | 金額 |
|---|---|---|
| 固定費率 | 300,000円 ÷ 1,000時間 | 300円/時間 |
| 予定配賦率 | 変動費率200円 + 固定費率300円 | 500円/時間 |
| 予定配賦額 | 500円 × 950時間 | 475,000円 |
| 予算許容額 | 200円 × 950時間 + 300,000円 | 490,000円 |
予算許容額とは、実際操業度において許される予算額のことです。差異は次の式で求めます。
- 予算差異 = 予算許容額 − 実際発生額 = 490,000円 − 495,000円 = △5,000円(不利)
- 操業度差異 = 固定費率 ×(実際操業度 − 基準操業度) = 300円 ×(950時間 − 1,000時間)= △15,000円(不利)
予算差異は「コストを使いすぎたかどうか」、操業度差異は「設備を予定どおり稼働できたかどうか」を表します。予算差異と操業度差異の合計は、必ず配賦差異の総額と一致します。この例でも△5,000円 + △15,000円 = △20,000円となり、先ほどの配賦差異と一致しています。
この関係を図に表したものがシュラッター図です。横軸に操業度、縦軸に金額をとり、原点から予定配賦率の傾きで伸びる直線と、固定費予算から変動費率の傾きで伸びる予算線を描きます。実際操業度の位置で、実際発生額・予算許容額・予定配賦額の3つの高さを比べると、上から順に予算差異と操業度差異が視覚的に読み取れます。操業度差異は「基準操業度に届かなかった分の固定費が回収できていない」ことを意味すると理解しておくと、図がなくても符号を間違えません。
- 1予定配賦率を求める(製造間接費予算 ÷ 基準操業度)
- 2予定配賦額を計算する(予定配賦率 × 実際操業度)
- 3実際発生額との差額を配賦差異として把握する
- 4公式法変動予算で予算差異と操業度差異に分析する
まとめ
- 製造間接費は配賦基準を使って製品に配賦する
- 予定配賦率は製造間接費予算 ÷ 基準操業度、予定配賦額は予定配賦率 × 実際操業度
- 実際発生額が予定配賦額を上回れば不利差異(借方差異)
- 公式法変動予算では、予算差異と操業度差異に分析する
- 予算差異 = 予算許容額 − 実際発生額、操業度差異 = 固定費率 ×(実際操業度 − 基準操業度)
計算の流れは「予定配賦率 → 予定配賦額 → 差異分析」の順で必ず固定されています。下の問題集で、数値を変えながら手順を体に覚え込ませましょう。
📚 試験で覚えるべき用語
- 配賦
- 製造間接費を直接作業時間などの配賦基準を使って各製品に割り当てる手続き。直接費をそのまま製品に集計する賦課(直課)と区別する。
- 予定配賦率
- 製造間接費予算を基準操業度で割った1時間あたりの配賦額。期首に決めておき計算を迅速化する。
- 基準操業度
- 1年間に予定される操業度(直接作業時間や機械運転時間など)。予定配賦率の計算で分母になる。
- 製造間接費配賦差異
- 予定配賦額と実際発生額の差額。実際発生額が多ければ借方差異(不利差異)、少なければ貸方差異(有利差異)。
- 公式法変動予算
- 製造間接費予算を変動費と固定費に分けて設定する予算。配賦差異を予算差異と操業度差異に分析するために使う。
- 予算差異
- 予算許容額から実際発生額を差し引いた差異。コストを使いすぎたかどうかを表す。
- 操業度差異
- 固定費率×(実際操業度−基準操業度)で求める差異。基準操業度に届かなかった分の固定費が回収できていないことを意味する。
- シュラッター図
- 横軸に操業度、縦軸に金額をとり、予定配賦額・予算許容額・実際発生額の関係から予算差異と操業度差異を視覚的に読み取る図。
