会計マスター

無形固定資産・ソフトウェア・研究開発費 — 償却3点セットと仮勘定を完全整理

簿記2級無形固定資産ソフトウェア研究開発費

無形固定資産とは

無形固定資産とは、形はないものの長期にわたって企業の収益獲得に貢献する資産のことです。簿記2級では、法律上の権利とソフトウェアが中心に出題されます。

勘定科目内容
特許権発明を独占的に利用できる権利
商標権商品やサービスのマークを独占的に使用できる権利
実用新案権・意匠権考案やデザインを独占的に利用できる権利
鉱業権鉱物を採掘できる権利
ソフトウェア自社利用目的のコンピュータプログラム

のれんも無形固定資産の一種ですが、合併・買収の単元で扱うため、この記事では法律上の権利とソフトウェアに絞って解説します。

取得時の処理 — 付随費用を忘れない

無形固定資産を取得したときは、購入代価に登録料や手数料などの付随費用を加えた金額を取得原価とします。建物や備品などの有形固定資産と同じ考え方です。付随費用を支払手数料などの費用にしてしまう誤りが多いので注意しましょう。

例1: 特許権を取得した

特許権を1,600,000円で購入し、登録料200,000円とあわせて小切手を振り出して支払った。

登録料200,000円も取得原価に含める

借方(左)

特許権1,800,000

貸方(右)

当座預金1,800,000

償却のルール — 残存価額ゼロ・定額法・直接法

無形固定資産は決算時に償却します。有形固定資産の減価償却と似ていますが、次の3点が異なります。

項目有形固定資産無形固定資産
残存価額ゼロとすることが多い必ずゼロ
償却方法定額法・定率法など定額法のみ
記帳方法間接法(減価償却累計額を使う)直接法(帳簿価額から直接減額)

無形固定資産の償却は「残存価額ゼロ・定額法・直接法」の3点セットで覚えましょう。費用の勘定科目は「特許権償却」「ソフトウェア償却」のように「○○償却」を使い、貸方は資産そのものを直接減らします。累計額の勘定は使いません。

例2: 特許権の償却

決算につき、当期首に取得した特許権1,800,000円(償却期間8年)を償却する。

1,800,000円 ÷ 8年 = 225,000円

直接法:特許権そのものを減らす

借方(左)

特許権償却225,000

貸方(右)

特許権225,000

期中に取得した場合は、取得日から決算日までの月数で月割計算します。たとえば10月1日に取得して3月31日決算なら、年間償却額に12分の6を掛けた金額が当期の償却額です。

自社利用ソフトウェアの処理

自社の業務で利用する目的のソフトウェアは、将来の費用削減や収益獲得が確実な場合に無形固定資産として計上します。会計システムや販売管理システムの導入をイメージするとよいでしょう。

制作中は「ソフトウェア仮勘定」

外部に制作を依頼して代金の一部を支払った段階では、まだソフトウェアは完成していません。完成前の支払額はソフトウェア仮勘定という資産の科目で処理します。建設中の建物を建設仮勘定で処理するのと同じ発想です。

ソフトウェアの制作を依頼し、契約代金3,000,000円のうち1,000,000円を小切手を振り出して支払った。

借方(左)

ソフトウェア仮勘定1,000,000

貸方(右)

当座預金1,000,000

完成したら「ソフトウェア」へ振り替える

完成して引き渡しを受けたら、ソフトウェア仮勘定からソフトウェア勘定へ振り替えます。残額をあとで支払う場合は未払金を計上します。

借方(左)

ソフトウェア3,000,000
合計3,000,000

貸方(右)

ソフトウェア仮勘定1,000,000
未払金2,000,000
合計3,000,000

償却は利用可能期間(原則5年以内)

自社利用ソフトウェアは、利用可能期間(原則として5年以内)にわたり残存価額ゼロの定額法・直接法で償却します。決算整理後の帳簿価額を問う問題では、取得から何年分の償却が済んでいるかを丁寧に数えることがポイントです。

自社利用ソフトウェアの勘定の流れ
ソフトウェア仮勘定(制作中)ソフトウェア(完成・振替)ソフトウェア償却(決算で費用化)

研究開発費は発生時に全額費用処理

新製品や新技術の研究・開発のために支出した金額は、研究開発費という費用の勘定で処理します。研究開発は成果が出るかどうか不確実なため、支出額は資産計上せず発生時にすべて費用処理するのがルールです。

とくに注意したいのは、研究開発のために機械や設備を購入した場合です。他の目的に転用できない研究開発専用の資産は、固定資産に計上せず購入時に全額を研究開発費とします。研究員の給料や試作品の材料費も同様に研究開発費です。

例3: 研究開発目的の支出

新技術の研究のため、研究専用の測定機器500,000円と研究員の給料300,000円を現金で支払った。

専用の機器も給料もまとめて費用処理

借方(左)

研究開発費800,000

貸方(右)

現金800,000

もしこの機器が他の業務にも転用できるものであれば、通常どおり機械装置などの固定資産に計上して減価償却します。「専用かどうか」が判断の分かれ目です。

まとめ

  • 無形固定資産の取得原価は購入代価プラス付随費用
  • 償却は残存価額ゼロ・定額法・直接法、期中取得は月割計算
  • 制作中の自社利用ソフトウェアはソフトウェア仮勘定で処理し、完成後にソフトウェアへ振替
  • 自社利用ソフトウェアは利用可能期間(原則5年以内)で償却
  • 研究開発費は資産計上せず、発生時に全額費用処理

無形固定資産は処理パターンが決まっているため、慣れれば確実な得点源になります。下の問題集で月割償却の計算と仮勘定の振替を練習して、仕上げましょう。

📚 試験で覚えるべき用語

無形固定資産
特許権や商標権、ソフトウェアなど、形はないが長期にわたり収益獲得に貢献する資産。取得原価は購入代価に付随費用を加えた額。
特許権
発明を独占的に利用できる法律上の権利。登録料などの付随費用を含めて資産計上する無形固定資産。
無形固定資産の償却
残存価額ゼロ・定額法・直接法で行う。費用科目は「特許権償却」など「○○償却」を使い、期中取得は月割計算する。
直接法
減価償却累計額を使わず、資産の帳簿価額から償却額を直接減額する記帳方法。無形固定資産の償却で用いる。
ソフトウェア仮勘定
制作中の自社利用ソフトウェアへの支払額を処理する資産の勘定。完成・引渡しを受けた時点でソフトウェア勘定へ振り替える。
ソフトウェア
自社利用目的のプログラムで、将来の費用削減や収益獲得が確実な場合に無形固定資産に計上する。利用可能期間(原則5年以内)で償却する。
研究開発費
新製品・新技術の研究開発のための支出を処理する費用の勘定。成果が不確実なため資産計上せず、発生時に全額費用処理する。