会計マスター

工業簿記の基礎 — 原価の分類と勘定連絡図を最初に固める

簿記2級工業簿記原価計算

簿記2級から新しく加わるのが工業簿記です。最初に全体像をつかんでおくと、その後の費目別計算や部門別計算の学習が一気に楽になります。この記事では、工業簿記の役割と原価の分類、そして原価が勘定をどう流れるかを解説します。

工業簿記と商業簿記の違い

商業簿記は「商品を仕入れてそのまま売る」企業の簿記でした。これに対して工業簿記は、材料を加工して製品を作り、それを販売する製造業の簿記です。

項目商業簿記工業簿記
対象商品売買業製造業
記録の中心外部との取引社内の製造活動(内部活動)
売上原価仕入れた商品の原価自社で計算した製品の製造原価
相棒となる計算なし原価計算

外部から仕入れた商品には値札がありますが、自社工場で作った製品の原価は自分で計算するしかありません。この計算手続きが原価計算であり、工業簿記は原価計算と一体で運用されます。

原価の分類

形態別分類 — 材料費・労務費・経費

原価は「何を消費したか」によって、次の3つに分類されます。

分類内容
材料費物品の消費素材費、買入部品費、工場消耗品費
労務費労働力の消費賃金、給料、賞与、法定福利費
経費材料費・労務費以外外注加工賃、電力料、工場減価償却費

製品との関連による分類 — 直接費と間接費

同じ原価でも、特定の製品にいくらかかったか跡づけられるものが直接費、跡づけられないものが間接費です。組み合わせると6つの区分ができます。

直接費間接費
材料費直接材料費(素材費など)間接材料費(工場消耗品費など)
労務費直接労務費(直接工の直接作業賃金)間接労務費(工場事務員の給料など)
経費直接経費(外注加工賃など)間接経費(電力料、減価償却費など)

直接費は仕掛品勘定へ、間接費はいったん製造間接費勘定へ集計してから仕掛品勘定へ配賦するという流れが、工業簿記全体を貫く大原則です。

製造原価と総原価

製品を作るためにかかった原価が製造原価、そこに販売費及び一般管理費を加えたものが総原価です。

  • 製造原価 = 直接材料費 + 直接労務費 + 直接経費 + 製造間接費
  • 総原価 = 製造原価 + 販売費及び一般管理費

たとえば直接材料費400,000円、直接労務費300,000円、直接経費50,000円、製造間接費250,000円なら製造原価は1,000,000円、これに販売費及び一般管理費150,000円を足した総原価は1,150,000円です。

非原価項目

すべての支出が原価になるわけではありません。製造や販売の活動と関係のない支出は非原価項目として原価に算入しません。代表例は次のとおりです。

  • 支払利息などの財務活動から生じる費用
  • 火災損失・災害損失などの異常な状態を原因とする損失
  • 法人税や配当金など利益の処分に関する項目

「工場の減価償却費は原価、本社の支払利息は非原価」というように、どの活動から生じた支出かで判断するのがコツです。

勘定連絡図 — 原価はこう流れる

工業簿記では、原価が勘定から勘定へリレーのように流れます。この流れを図にしたものが勘定連絡図です。

材料 → 仕掛品 → 製品 → 売上原価という本流と、間接費が製造間接費勘定を経由して仕掛品に合流する支流を押さえましょう。

勘定連絡の本流(間接費は製造間接費勘定を経由して仕掛品へ合流)
材料仕掛品製品売上原価

例1: 材料200,000円を消費した(直接材料費150,000円、間接材料費50,000円)

材料の消費

借方(左)

仕掛品150,000
製造間接費50,000
合計200,000

貸方(右)

材料200,000
合計200,000

賃金や経費を消費したときも考え方は同じで、直接分は仕掛品勘定へ、間接分は製造間接費勘定へ振り替えます。

例2: 製造間接費80,000円を仕掛品に配賦した

製造間接費の配賦

借方(左)

仕掛品80,000

貸方(右)

製造間接費80,000

例3: 製品300,000円が完成した

製品の完成

借方(左)

製品300,000

貸方(右)

仕掛品300,000

例4: 原価250,000円の製品を400,000円で掛け販売した

売上の計上

借方(左)

売掛金400,000

貸方(右)

売上400,000
売上原価への振り替え

借方(左)

売上原価250,000

貸方(右)

製品250,000

未完成の製品が仕掛品、完成した製品が製品勘定に残るという区別も重要です。

原価計算期間

商業簿記の会計期間は通常1年ですが、原価計算は毎月の暦日どおり1か月を区切りとして行います。これを原価計算期間といいます。毎月原価を集計することで、原価の変化にすばやく対応できるからです。

まとめ

  • 工業簿記は製造業の内部活動を記録し、原価計算と一体で運用される
  • 原価は材料費・労務費・経費に分類され、さらに直接費と間接費に分かれる
  • 製造原価に販売費及び一般管理費を加えたものが総原価で、支払利息などは非原価項目
  • 原価は材料→仕掛品→製品→売上原価の順に流れ、間接費は製造間接費勘定を経由する
  • 原価計算期間は暦の1か月

勘定連絡図が頭に入れば、工業簿記の仕訳は驚くほど機械的に切れるようになります。下の問題集で流れを確認してみましょう。

📚 試験で覚えるべき用語

原価計算
製品の製造原価を計算する手続き。工業簿記と一体で運用され、計算期間は暦の1か月(原価計算期間)とする。
直接費と間接費
特定の製品にいくらかかったか跡づけられる原価が直接費、跡づけられない原価が間接費。直接費は仕掛品勘定へ、間接費は製造間接費勘定へ集計する。
製造原価
製品を作るためにかかった原価。直接材料費・直接労務費・直接経費・製造間接費の合計で求める。
総原価
製造原価に販売費及び一般管理費を加えたもの。製品の販売までを含めた原価の合計。
非原価項目
製造・販売活動と関係がないため原価に算入しない項目。支払利息などの財務費用、火災損失などの異常な損失、法人税・配当金が代表例。
仕掛品
製造途中で未完成の製品を集計する資産の勘定。完成すると製品勘定へ振り替えられる。
勘定連絡図
原価が勘定間を流れる様子を表した図。材料→仕掛品→製品→売上原価が本流で、間接費は製造間接費勘定を経由して仕掛品に合流する。
原価計算期間
原価計算の区切りとなる期間で、暦の1か月とする。毎月集計することで原価の変化にすばやく対応できる。