決算と財務諸表の応用 — 棚卸減耗損・商品評価損から利益の区分まで
簿記2級の決算整理は、3級で学んだ内容に「棚卸減耗損・商品評価損」という新しい論点が加わり、財務諸表も区分表示された本格的なものを作成します。この記事では、期末商品の評価から損益計算書・貸借対照表の区分までを一気に整理します。
棚卸減耗損 — 数量が減っていたら
決算では、帳簿上の在庫数量(帳簿棚卸数量)と、実際に倉庫を数えた数量(実地棚卸数量)を突き合わせます。紛失や破損で実地数量が少なくなっていた場合、その減少分を**棚卸減耗損(費用)**として処理します。
計算式は次のとおりです。
棚卸減耗損 =(帳簿棚卸数量 - 実地棚卸数量)× 原価
例: 帳簿棚卸数量100個、実地棚卸数量95個、原価は1個200円
棚卸減耗損 =(100個 - 95個)× 200円 = 1,000円
借方(左)
貸方(右)
商品評価損 — 価値が下がっていたら
実際に残っている商品でも、時価の下落や品質低下で正味売却価額(売れる見込みの金額)が原価を下回っている場合は、その差額を**商品評価損(費用)**として処理します。
商品評価損 = 実地棚卸数量 ×(原価 - 正味売却価額)
例: 実地棚卸数量95個、原価200円、正味売却価額180円
商品評価損 = 95個 ×(200円 - 180円)= 1,900円
借方(左)
貸方(右)
評価損の計算に使う数量は、帳簿数量ではなく実地数量です。減耗してなくなった商品には評価損は発生しない、と考えると覚えやすいでしょう。
棚卸減耗損(数量の減少)
- •紛失・破損などで実地数量が減った分
- •(帳簿棚卸数量 - 実地棚卸数量)× 原価
- •計算に使うのは帳簿数量と実地数量の差
商品評価損(価値の下落)
- •正味売却価額が原価を下回った分
- •実地棚卸数量 ×(原価 - 正味売却価額)
- •計算に使う数量は実地数量
計算の順序 — まず減耗、次に評価
減耗損と評価損の両方が出題されたときは、必ず「棚卸減耗損 → 商品評価損」の順で計算します。
- 1帳簿棚卸高(帳簿数量 × 原価)を求める
- 2棚卸減耗損 =(帳簿数量 - 実地数量)× 原価 を計算する
- 3商品評価損 = 実地数量 ×(原価 - 正味売却価額)を計算する
- 4貸借対照表の商品 = 実地数量 × 正味売却価額 を確認する
先ほどの例を一覧にすると次のようになります。
| 項目 | 計算 | 金額 |
|---|---|---|
| 帳簿棚卸高 | 100個 × 200円 | 20,000円 |
| 棚卸減耗損 | (100個 - 95個)× 200円 | 1,000円 |
| 商品評価損 | 95個 ×(200円 - 180円) | 1,900円 |
| 貸借対照表の商品 | 95個 × 180円 | 17,100円 |
貸借対照表に表示される商品の金額は、実地数量に正味売却価額を掛けた17,100円になる点も併せて押さえましょう。
売上原価への算入と損益計算書での表示
売上原価の計算は「期首商品+当期仕入-期末商品」が基本形です。ここで使う期末商品は**帳簿棚卸高(帳簿数量×原価)**である点に注意してください。そのうえで、棚卸減耗損と商品評価損は、問題の指示に従って売上原価に算入するのが原則です。仕訳では、いったん計上した棚卸減耗損・商品評価損を仕入勘定に振り替えます。
借方(左)
貸方(右)
損益計算書では、売上原価の区分の中に「棚卸減耗損」「商品評価損」という内訳科目で表示します。指示によっては棚卸減耗損を販売費及び一般管理費に表示する場合もあるため、必ず問題文の指示を優先しましょう。
損益計算書の区分 — 5つの利益
2級の損益計算書は、利益を段階的に計算する区分式で作成します。
| 区分 | 計算 |
|---|---|
| 売上総利益 | 売上高 - 売上原価 |
| 営業利益 | 売上総利益 - 販売費及び一般管理費 |
| 経常利益 | 営業利益 + 営業外収益 - 営業外費用 |
| 税引前当期純利益 | 経常利益 + 特別利益 - 特別損失 |
| 当期純利益 | 税引前当期純利益 - 法人税、住民税及び事業税 |
たとえば売上総利益500,000円、販売費及び一般管理費300,000円、営業外収益20,000円、営業外費用10,000円なら、営業利益は200,000円、経常利益は210,000円です。どの収益・費用がどの区分に入るかを判断できることが、財務諸表作成問題の得点力に直結します。受取利息や支払利息は営業外、固定資産売却損益は特別損益に入るのが代表例です。
貸借対照表の区分表示
貸借対照表は、資産を流動資産・固定資産に、負債を流動負債・固定負債に区分して表示します。判定の基本は**一年基準(決算日の翌日から1年以内に回収・支払の期限が来るかどうか)**です。
| 項目 | 表示区分 |
|---|---|
| 前払費用・未収収益などの経過勘定 | 流動資産(長期のものを除く) |
| 未払費用・前受収益 | 流動負債 |
| 1年以内に返済する借入金 | 流動負債 |
| 返済期限が1年を超える借入金 | 固定負債(長期借入金) |
決算整理で計上した経過勘定(前払費用・未払費用・未収収益・前受収益)が貸借対照表のどこに載るかまでセットで押さえておくと、精算表から財務諸表への流れが一本につながります。
精算表との関係
精算表は、残高試算表に決算整理を加えて損益計算書と貸借対照表へ振り分ける一覧表です。2級では棚卸減耗損・商品評価損を含む決算整理を精算表上で処理させる問題も出題されます。修正記入欄の借方・貸方を正しく埋め、費用・収益は損益計算書欄へ、資産・負債・純資産は貸借対照表欄へという流れは3級と同じです。新しい科目が増えただけで、仕組み自体は変わりません。
まとめ
- 棚卸減耗損は数量の減少、商品評価損は価値の下落に対応する費用
- 減耗損は(帳簿数量-実地数量)×原価、評価損は実地数量×(原価-正味売却価額)
- どちらも原則として売上原価に算入し、損益計算書では内訳科目として表示する
- 損益計算書は売上総利益から当期純利益まで5つの利益を段階的に計算する
- 貸借対照表は一年基準などにより流動・固定に区分する
計算パターンと表示区分は、手を動かした回数だけ確実になります。下の問題集で数値計算と区分の判定を練習しましょう。
📚 試験で覚えるべき用語
- 棚卸減耗損
- 紛失・破損などで実地棚卸数量が帳簿棚卸数量を下回った分の費用。(帳簿棚卸数量-実地棚卸数量)×原価で計算する。
- 商品評価損
- 正味売却価額が原価を下回った場合の値下がり分の費用。実地棚卸数量×(原価-正味売却価額)で計算する。
- 正味売却価額
- 商品が売れる見込みの金額。原価を下回るときは商品評価損を計上し、貸借対照表の商品は実地数量×正味売却価額で表示する。
- 実地棚卸
- 決算時に倉庫の在庫を実際に数えて実地棚卸数量を確定する手続き。帳簿棚卸数量との差から棚卸減耗損を把握する。
- 営業利益
- 売上総利益から販売費及び一般管理費を差し引いた利益。会社の本業による儲けを表す。
- 経常利益
- 営業利益に受取利息などの営業外収益を加え、支払利息などの営業外費用を差し引いた利益。
- 一年基準(ワン・イヤー・ルール)
- 決算日の翌日から1年以内に回収・支払の期限が来るかどうかで、資産・負債を流動と固定に区分する基準。
