会計マスター

経費を完全マスターする — 4つの把握方法と直接経費・間接経費の区別

簿記2級工業簿記経費原価計算

経費とは何か

経費とは、材料費と労務費以外の原価要素すべてを指す言葉です。工場建物の減価償却費、電力料、外注加工賃、保険料など、モノの消費でもヒトの労働でもない原価はすべて経費に含まれます。

経費も他の原価要素と同じく、次の2つに分かれます。

  • 直接経費 … どの製品のためにかかったかが明らかなもの
  • 間接経費 … 特定の製品と結びつけられないもの

経費の学習ポイントは大きく2つです。重要なのは「消費額をどうやって把握するか(4分類)」と「直接経費になるのはどれか」です。順に見ていきましょう。

把握方法による4つの分類

経費は、当月の消費額をどのように計算するかによって4つに分類されます。

分類把握方法
支払経費当月の支払額(未払・前払を調整)で把握外注加工賃、修繕料、旅費交通費
月割経費年額・数か月分を月割りして把握減価償却費、賃借料、保険料
測定経費メーターなどの当月測定量で把握電力料、ガス代、水道料
発生経費実際の発生額を帳簿記録などから把握棚卸減耗費

支払経費

当月に支払った額をもとに消費額を計算しますが、未払分や前払分があるときは調整が必要です。考え方は労務費の要支払額とまったく同じです。

当月消費額 = 当月支払高 − 前月未払高 + 当月未払高

例: 修繕料の当月支払高60,000円、前月未払高8,000円、当月未払高10,000円

  • 当月消費額 = 60,000円 − 8,000円 + 10,000円 = 62,000円

前月未払高は前月の原価に属するので差し引き、当月未払高は当月の原価に属するので加えます。前払がある場合は符号が逆になり、前月前払高を加え、当月前払高を差し引きます。

支払経費の当月消費額の求め方
  1. 1当月支払高 60,000円から出発する
  2. 2前月の原価に属する前月未払高 8,000円を差し引く
  3. 3当月の原価に属する当月未払高 10,000円を加えて 62,000円

月割経費

年間や数か月分でまとめて計算される費用は、月割りして当月分を求めます。

例: 機械の減価償却費の年間見積額2,400,000円

  • 当月消費額 = 2,400,000円 ÷ 12か月 = 200,000円

測定経費

電力料などは、支払額ではなくメーターで測定した当月の消費量にもとづく金額を当月の経費とします。請求書の支払額は検針期間のズレを含むため、原価計算では測定額を優先するのです。たとえば当月支払額45,000円、当月測定額48,000円なら、当月の経費は48,000円です。

発生経費

実際の支出を伴わないまま発生する経費です。代表例は棚卸減耗費で、帳簿棚卸数量と実地棚卸数量の差から発生額を把握します。お金の動きがないのに原価になる点が特徴で、正常な範囲のものは間接経費として製造間接費に含めます。

直接経費と間接経費

経費のほとんどは間接経費ですが、試験では直接経費になるものを覚えておく必要があります。減価償却費・賃借料・電力料・修繕料・保険料などは、工場全体のために発生する費用であり、すべて間接経費です。

直接経費の代表例は外注加工賃と特許権使用料です。

  • 外注加工賃 … 材料の加工を外部業者に委託したときの加工賃。どの製品のための加工かが明らかなので直接経費
  • 特許権使用料 … 特定の製品を製造するために他社の特許を使う対価。生産量に応じて支払うものは直接経費

直接経費

  • 外注加工賃
  • 特許権使用料

間接経費

  • 減価償却費
  • 賃借料
  • 電力料
  • 修繕料
  • 保険料

直接経費は仕掛品勘定へ、間接経費は製造間接費勘定へ振り替えます。外注加工賃100,000円を掛けとした場合の消費の仕訳は次のとおりです。

直接経費(外注加工賃)の消費

借方(左)

仕掛品100,000

貸方(右)

外注加工賃100,000

一方、工場建物の減価償却費200,000円を計上する場合は間接経費なので、次のようになります。

間接経費(減価償却費)の計上

借方(左)

製造間接費200,000

貸方(右)

減価償却累計額200,000

仕損費の扱いの基礎

仕損(しそんじ)とは、加工に失敗して不合格品(仕損品)が生じることです。仕損の補修や代品製造にかかった原価を仕損費といいます。

個別原価計算では、どの製造指図書(どの製品の注文)で仕損が生じたかがわかるため、正常な仕損費は原則としてその製造指図書に賦課する直接経費として扱います。補修のための指図書を発行した場合は、その補修指図書に集計された原価が仕損費になります。

ここでは「仕損費という経費があり、個別原価計算では直接経費として扱うのが基本」という位置づけを押さえておけば十分です。詳しい計算は個別原価計算の単元で学習します。

まとめ

  • 経費は材料費・労務費以外の原価要素の総称
  • 把握方法により支払経費・月割経費・測定経費・発生経費の4つに分類される
  • 支払経費は未払・前払を調整し、月割経費は月割計算、測定経費は測定額で把握する
  • 直接経費の代表例は外注加工賃と特許権使用料で、仕掛品勘定へ振り替える
  • 正常な仕損費は個別原価計算では直接経費として扱うのが基本

経費は暗記項目が中心ですが、4分類と直接経費の具体例は選択肢問題で確実に問われます。下の問題集で知識を定着させましょう。

📚 試験で覚えるべき用語

経費
材料費と労務費以外の原価要素の総称。減価償却費・電力料・外注加工賃などが含まれ、直接経費と間接経費に分かれる。
支払経費
当月の支払額をもとに消費額を把握する経費。未払・前払があるときは当月支払高−前月未払高+当月未払高のように調整する。修繕料や旅費交通費が例。
月割経費
年額や数か月分でまとめて計算される費用を月割りして当月分を求める経費。減価償却費・賃借料・保険料が代表例。
測定経費
メーターなどで測定した当月の消費量にもとづいて把握する経費。電力料・ガス代・水道料が代表例で、支払額ではなく測定額を使う。
発生経費
実際の支出を伴わずに発生額を帳簿記録などから把握する経費。代表例は棚卸減耗費で、正常な範囲は間接経費として処理する。
外注加工賃
材料の加工を外部業者に委託したときの加工賃。どの製品のための加工か明らかなので直接経費となり、仕掛品勘定へ振り替える。
特許権使用料
特定の製品を製造するために他社の特許を使う対価。生産量に応じて支払うものは直接経費となる。
仕損費
加工に失敗して不合格品(仕損品)が生じたときの補修や代品製造にかかった原価。個別原価計算では正常な仕損費を直接経費としてその製造指図書に賦課するのが原則。