会計マスター

合併とのれんの会計処理 — 吸収合併の仕訳からのれん償却・負ののれんまで

簿記2級合併のれん純資産

企業が他の会社を吸収合併すると、相手の資産や負債をまるごと引き継ぎます。このとき支払った対価と受け入れた純資産の差額として登場するのがのれんです。簿記2級では、合併の仕訳とのれんの計算・償却が定番の出題テーマです。手順を分解して確実にマスターしましょう。

吸収合併とは

吸収合併とは、ある会社(存続会社)が他の会社(消滅会社)を取り込み、消滅会社の資産・負債のすべてを引き継ぐ組織再編です。存続会社は対価として、自社の株式を消滅会社の株主に交付するのが一般的です。

会計処理のルールは次の2点に集約されます。

処理対象ルール
受け入れる資産・負債帳簿価額ではなく時価で計上する
交付する株式交付株式の価額を資本金・資本準備金などの払込資本とする

受入資産・負債は時価、交付株式は資本金等へ。この2つが合併仕訳の骨組みです。消滅会社の帳簿価額をそのまま使わない点に注意しましょう。また、交付株式の価額のうちどれだけを資本金とするかは増資と同じルールで、原則は全額、会社法の容認で2分の1までを資本準備金とすることができます。問題文の指示に従って振り分けましょう。

のれんの計算

交付した株式の価額(取得原価)と、受け入れた純資産の時価(諸資産の時価 − 諸負債の時価)は、通常一致しません。この差額がのれんです。

  • 交付株式の価額 が 受入純資産の時価 より大きい → のれん(無形固定資産)
  • 交付株式の価額 が 受入純資産の時価 より小さい → 負ののれん発生益(特別利益)

のれん(借方差額)

  • 交付株式の価額 > 受入純資産の時価
  • 無形固定資産に計上
  • 20年以内に定額法などで償却

負ののれん発生益(貸方差額)

  • 交付株式の価額 < 受入純資産の時価
  • 発生した期の特別利益として一括計上
  • 資産計上・償却は行わない

のれんは、相手企業のブランド力や顧客基盤といった、帳簿に載らない超過収益力への対価と考えられます。

例1: のれんが生じる合併

A社はB社を吸収合併し、B社の株主に株式100株(1株あたりの時価60,000円)を交付して全額を資本金とした。B社の諸資産の時価は8,000,000円、諸負債の時価は3,000,000円である。

まず金額を整理します。

項目金額
交付株式の価額(100株 × 60,000円)6,000,000円
受入純資産の時価(8,000,000円 − 3,000,000円)5,000,000円
のれん(差額)1,000,000円
合併仕訳の手順
  1. 1交付株式の価額(取得原価)を計算する
  2. 2受入純資産の時価(諸資産の時価 − 諸負債の時価)を計算する
  3. 3差額をのれん(または負ののれん発生益)とする
  4. 4借方に受入資産とのれん、貸方に受入負債と資本金等を記入する

借方(左)

諸資産8,000,000
のれん1,000,000
合計9,000,000

貸方(右)

諸負債3,000,000
資本金6,000,000
合計9,000,000

借方に受入資産とのれん、貸方に受入負債と資本金等という形は毎回同じです。問題の指示で「うち半分を資本準備金とする」とあれば、貸方を資本金3,000,000円と資本準備金3,000,000円に分けるだけです。

のれんの償却

計上したのれんは、20年以内のその効果の及ぶ期間にわたり、定額法などで規則的に償却します。試験では「20年で定額法により償却」という指示が典型です。

例2: 決算時の償却

例1ののれん1,000,000円を、当期首の合併から20年間で定額法により償却する場合、当期の償却額は1,000,000円 ÷ 20年 = 50,000円です。

借方(左)

のれん償却50,000

貸方(右)

のれん50,000

のれん償却は販売費及び一般管理費に表示します。期中に合併した場合は月割計算になる点も、固定資産の減価償却と同じ感覚で対応しましょう。たとえば3月末決算の会社が12月1日の合併でのれん1,200,000円を計上し20年で償却する場合、当期の償却額は1,200,000円 ÷ 20年 × 12分の4 = 20,000円です。なお、のれんは貸借対照表では無形固定資産の区分に表示されます。決算整理後ののれんの残高を問う問題では、償却後の帳簿価額を答える点にも注意してください。

負ののれん発生益

受け入れた純資産の時価より交付株式の価額のほうが小さい場合、差額は負ののれん発生益として処理します。安く買収できたことによる利益であり、発生した期の特別利益として一括計上します。のれんと違って資産計上や償却は行いません。

例3: 負ののれんが生じる合併

C社はD社を吸収合併し、株式を交付した(交付株式の価額4,000,000円、全額資本金)。D社の諸資産の時価は6,500,000円、諸負債の時価は2,200,000円である。

受入純資産の時価は6,500,000円 − 2,200,000円 = 4,300,000円で、交付額4,000,000円を300,000円上回ります。

借方(左)

諸資産6,500,000
合計6,500,000

貸方(右)

諸負債2,200,000
資本金4,000,000
負ののれん発生益300,000
合計6,500,000

差額が借方に出ればのれん、貸方に出れば負ののれん発生益と整理すると迷いません。負ののれん発生益は損益計算書の特別利益の区分に表示されるため、表示区分を問う問題にも対応できるようにしておきましょう。

まとめ

  • 吸収合併では受入資産・負債を時価で計上し、交付株式の価額を資本金等とする
  • のれんは「交付株式の価額 − 受入純資産の時価」の差額で、無形固定資産に計上する
  • のれんは20年以内に定額法などで償却し、のれん償却は販売費及び一般管理費とする
  • 受入純資産が交付額を上回る場合は負ののれん発生益(特別利益)で処理する

合併の仕訳は、金額整理の表を書いてから仕訳に落とす手順が確実です。下の問題集で、のれんの計算から償却までを通しで練習しましょう。

📚 試験で覚えるべき用語

吸収合併
存続会社が消滅会社の資産・負債のすべてを引き継ぐ組織再編。受け入れる資産・負債は帳簿価額ではなく時価で計上する。
のれん
交付株式の価額(取得原価)が受入純資産の時価を上回る差額。無形固定資産に計上し、20年以内に定額法などで償却する。
負ののれん発生益
受入純資産の時価が交付株式の価額を上回る場合の貸方差額。発生した期の特別利益として一括計上し、資産計上・償却は行わない。
のれん償却
計上したのれんを20年以内の効果の及ぶ期間にわたり規則的に費用化する手続き。損益計算書では販売費及び一般管理費に表示する。
受入純資産の時価
受け入れた諸資産の時価から諸負債の時価を差し引いた金額。交付株式の価額との差額がのれん(または負ののれん発生益)になる。
資本準備金
株式の交付額のうち資本金に組み入れなかった部分。会社法の容認により交付額の2分の1までを資本金とせず資本準備金にできる。