会計マスター

外貨建取引の会計処理 — 換算ルールと為替予約の基礎を完全理解

簿記2級外貨建取引為替差損益為替予約

外貨建取引の基本 — 3つのタイミングで考える

海外との取引ではドルなどの外貨で金額が決まりますが、帳簿には円に換算して記録しなければなりません。この単元のテーマは「いつ、どのレートで換算するか」です。次の3つのタイミングを軸に整理しましょう。

タイミング使用する為替レート
取引発生時取引発生時のレート
決済時決済時のレート
決算時決算時のレート(貨幣項目のみ換算替え)

取引発生時の処理

外貨建てで商品を輸入・輸出したときは、取引発生時の為替レートで円換算して仕訳します。

例1: 商品を輸入した

米国の仕入先から商品1,000ドルを掛けで仕入れた。取引時の為替レートは1ドル140円である。

1,000ドル × 140円 = 140,000円

1,000ドル × 取引時レート140円

借方(左)

仕入140,000

貸方(右)

買掛金140,000

前払金・前受金を経由する場合

輸入に先立って手付金を支払っていた場合、前払金は支払時のレートで確定し、その後は換算し直しません。商品を仕入れたときの仕入の金額は、前払金部分は支払時レート、残額は仕入時レートで換算した合計になります。

手付金200ドル(支払時レート1ドル138円で27,600円)を支払っていた商品1,000ドルを仕入れ、残額は掛けとした。仕入時のレートは1ドル140円である。

前払金は支払時レート、残額800ドルは仕入時レート140円

借方(左)

仕入139,600
合計139,600

貸方(右)

前払金27,600
買掛金112,000
合計139,600

決済時の処理と為替差損益

決済時のレートで換算した支払額・受取額と、帳簿上の債権債務の金額との差額は、為替差損益という科目で処理します。

例2: 買掛金を決済した

例1の買掛金1,000ドルを、1ドル138円のときに当座預金から支払った。

  • 帳簿上の買掛金: 140,000円
  • 実際の支払額: 1,000ドル × 138円 = 138,000円
円高で支払額が減り、差額は為替差益

借方(左)

買掛金140,000
合計140,000

貸方(右)

当座預金138,000
為替差損益2,000
合計140,000

円高になったため、支払額が帳簿価額より少なくて済み、差額2,000円は利益(為替差益)です。相場の動きで損にも益にもなるため、仕訳上は為替差損益ひとつの科目で処理し、損益計算書では純額で為替差益(営業外収益)または為替差損(営業外費用)として表示します。

決算時の処理 — 換算替えは貨幣項目のみ

決算日に外貨建ての資産・負債が残っている場合、決算時のレートで換算替えするのは、外国通貨や売掛金・買掛金などの貨幣項目だけです。

区分決算時の扱い
貨幣項目外国通貨、外貨預金、売掛金、買掛金、貸付金、借入金、未収入金、未払金決算時レートに換算替え
非貨幣項目前払金、前受金、商品などの棚卸資産換算替えしない(計上時のレートのまま)

前払金・前受金はすでに金銭の受払いが終わっており、将来お金で決済されるものではないため、換算替えしません。ここが試験で最も狙われるポイントです。「この項目は将来、外貨で受け払いするお金か」と考えると判断できます。

換算替えする(貨幣項目)

  • 外国通貨・外貨預金
  • 売掛金・買掛金
  • 貸付金・借入金
  • 未収入金・未払金

換算替えしない(非貨幣項目)

  • 前払金
  • 前受金
  • 商品などの棚卸資産

例3: 決算時の換算替え

決算日現在、売掛金2,000ドル(取引時レート1ドル145円で計上)がある。決算時のレートは1ドル148円である。

2,000ドル ×(148円 − 145円)= 6,000円(売掛金の増加)

円安で債権が増え、為替差益が発生

借方(左)

売掛金6,000

貸方(右)

為替差損益6,000

円安が進んだので、円建ての債権額が増え、為替差益が生じています。逆に円高なら借方に為替差損益(差損)を計上します。

為替予約 — 振当処理の基礎

為替レートの変動リスクを避けるため、将来の決済に適用するレートをあらかじめ契約で固定するのが為替予約です。2級では振当処理の基礎が出題されます。予約レートを債権債務そのものに振り当てて換算するので「振当処理」と呼ばれます。

  • 取引と同時に予約した場合 … 取引を予約レートで換算して計上します。以後、決算時の換算替えは不要で、決済まで為替差損益は生じません。
  • 取引のあとで予約した場合 … 予約を付した時点で、債権債務の帳簿価額を予約レートによる金額に換算替えし、差額は為替差損益として当期の損益に計上します。予約後は、決算が来ても換算替えしません。

例4: 取引後に為替予約を付した

売掛金3,000ドル(1ドル150円で換算した450,000円で計上済み)について、1ドル147円で為替予約を付した。

3,000ドル ×(150円 − 147円)= 9,000円(売掛金の減少)

予約時に一度だけ差額を認識する

借方(左)

為替差損益9,000

貸方(右)

売掛金9,000

予約を付けたあとは、決算時も決済時も予約レートのままで、追加の為替差損益は生じません。「予約時に一度だけ差額を認識し、その後は動かさない」と覚えましょう。

まとめ

  • 取引発生時は取引日レート、決済時は決済日レートで換算する
  • 決済差額・換算差額は為替差損益で処理し、損益計算書では純額表示する
  • 決算時に換算替えするのは貨幣項目のみで、前払金・前受金は換算替えしない
  • 為替予約を付した債権債務は予約レートで換算し、以後は換算替えしない

換算のタイミングとレートの対応さえ押さえれば、外貨建取引は計算自体は単純な掛け算です。下の問題集で、決算時の換算替えと為替予約のパターンを繰り返し練習しましょう。

📚 試験で覚えるべき用語

外貨建取引
外国通貨で金額が表示される取引。取引発生時の為替レートで円換算して帳簿に記録する。
為替差損益
外貨建債権債務の換算差額・決済差額を処理する勘定科目。損益計算書では純額で為替差益(営業外収益)または為替差損(営業外費用)として表示する。
貨幣項目
外国通貨・外貨預金・売掛金・買掛金など、将来外貨で受け払いされる資産・負債。決算時に決算時レートへ換算替えする。
非貨幣項目
前払金・前受金や商品などの棚卸資産のこと。将来お金で決済されるものではないため、決算時に換算替えせず計上時のレートのままとする。
為替予約
将来の決済に適用する為替レートをあらかじめ契約で固定する取引。為替レートの変動リスクを避けるヘッジ手段。
振当処理
予約レートを外貨建債権債務そのものに振り当てて換算する為替予約の処理方法。予約後は決算時も決済時も換算替えしない。