部門別原価計算の全体像 — 直接配賦法と相互配賦法をマスターする
製造間接費を工場全体で一括して配賦すると、製品原価の正確性が損なわれることがあります。そこで登場するのが「部門別原価計算」です。簿記2級の第4問で配賦表を作成させる形式が定番なので、計算の流れを確実に押さえましょう。
なぜ部門別に計算するのか
工場全体でひとつの配賦率を使う方法を総括配賦といいますが、部門ごとに設備や作業内容が違う場合、原価の発生実態を反映できません。例えば高価な機械が並ぶ部門と手作業中心の部門では、1時間あたりに発生する間接費がまったく異なるはずです。そこで部門ごとに製造間接費を集計し、部門ごとの配賦率で製品に配賦するのが部門別原価計算です。これにより製品原価の計算がより正確になり、部門ごとの原価管理にも役立ちます。計算の流れは、第1次集計(費目を部門へ)、第2次集計(補助部門費を製造部門へ)、そして製品への配賦という3ステップです。
- 1第1次集計 — 製造間接費を各部門に集計する(部門個別費は賦課、部門共通費は配賦)
- 2第2次集計 — 補助部門費を製造部門に配賦する
- 3製造部門ごとの配賦率で製品(仕掛品)に配賦する
製造部門と補助部門
工場の部門は、次の2つに大きく分かれます。
| 区分 | 内容 | 例 |
|---|---|---|
| 製造部門 | 製品の製造作業を直接行う部門 | 切削部門、組立部門 |
| 補助部門 | 製造部門の活動を補助する部門 | 動力部門、修繕部門、工場事務部門 |
補助部門は製品の製造に直接関わらないため、補助部門に集計された原価は、最終的にすべて製造部門に配賦し直します。製品への配賦は、あくまで製造部門から行うのです。
製造部門
- •切削部門
- •組立部門
補助部門
- •動力部門
- •修繕部門
- •工場事務部門
部門個別費と部門共通費
部門別計算の第1ステップは、製造間接費を各部門に集計することです(第1次集計)。
- 部門個別費 … どの部門で発生したかが明らかな原価。各部門にそのまま**賦課(直課)**します。例えば各部門専用機械の減価償却費です。
- 部門共通費 … 複数の部門に共通して発生する原価。適切な配賦基準で各部門に配賦します。例えば工場建物の減価償却費は占有面積、福利厚生費は従業員数を基準にします。
補助部門費の製造部門への配賦
第2ステップは、補助部門費を製造部門へ配賦することです(第2次集計)。簿記2級では直接配賦法と**相互配賦法(簡便法)**の2つが出題されます。
直接配賦法
直接配賦法は、補助部門同士のサービスのやり取りを無視し、製造部門への提供割合だけで配賦する方法です。
【例】動力部門費 600,000円。動力供給量は切削部門 3,000kWh、組立部門 2,000kWh、修繕部門 1,000kWh
修繕部門への供給は無視し、製造部門への供給量合計 5,000kWh を基準にします。
| 配賦先 | 計算 | 配賦額 |
|---|---|---|
| 切削部門 | 600,000円 × 3,000/5,000 | 360,000円 |
| 組立部門 | 600,000円 × 2,000/5,000 | 240,000円 |
分母に補助部門への提供分を含めないのが最大のポイントです。
相互配賦法(簡便法)
相互配賦法(簡便法)は、補助部門同士のサービス提供も考慮する方法で、2段階で配賦します。
- 第1次配賦 … 補助部門費を、他の補助部門も含めた提供先すべてに配賦する
- 第2次配賦 … 第1次配賦で補助部門に配賦された金額を、今度は製造部門のみに配賦する(直接配賦法と同じ要領)
【例】動力部門費 500,000円。供給割合が切削部門 50パーセント、組立部門 30パーセント、修繕部門 20パーセントなら、第1次配賦では切削部門に250,000円、組立部門に150,000円、そして修繕部門にも100,000円を配賦します。修繕部門に集まった金額は、第2次配賦で製造部門だけに配賦し直します。
第1次配賦は補助部門にも配賦し、第2次配賦は製造部門だけに配賦するという2段構えを覚えれば、配賦表の空欄はすべて埋められます。試験では第1次配賦と第2次配賦で分母が変わる点がひっかけどころです。
部門別予定配賦
各製造部門に集計された部門費は、部門ごとの予定配賦率で製品(仕掛品)に配賦します。
部門別予定配賦率 = 部門費予算 ÷ 部門の基準操業度
【例】切削部門の年間部門費予算 3,000,000円、年間基準機械運転時間 6,000時間なら、予定配賦率は500円/時間です。当月の実際機械運転時間が480時間であれば、予定配賦額は500円 × 480時間 = 240,000円となります。
借方(左)
貸方(右)
実際発生額との差額は部門ごとの配賦差異として把握します。実際発生額が252,000円なら差異は12,000円の不利差異(借方差異)です。
借方(左)
貸方(右)
機械中心の部門には機械運転時間、手作業中心の部門には直接作業時間というように、部門の実態に合った基準を使えるのが部門別計算の強みです。
まとめ
- 部門別原価計算は、製造間接費を部門ごとに集計してから製品に配賦する方法
- 部門個別費は賦課、部門共通費は配賦基準を使って配賦する
- 補助部門費は直接配賦法または相互配賦法(簡便法)で製造部門に集計する
- 直接配賦法は補助部門間の用役提供を無視、相互配賦法は第1次配賦で考慮する
- 製造部門費は部門別の予定配賦率で仕掛品に配賦し、差異を部門ごとに把握する
配賦表の作成は手順さえ覚えれば得点源になります。下の問題集で直接配賦法と相互配賦法の計算を繰り返し練習しましょう。
📚 試験で覚えるべき用語
- 部門別原価計算
- 製造間接費を部門ごとに集計し、部門ごとの配賦率で製品に配賦する方法。製品原価の正確性を高め、部門別の原価管理にも役立つ。
- 製造部門
- 切削部門・組立部門など、製品の製造作業を直接行う部門。製品への配賦はこの部門から行う。
- 補助部門
- 動力部門・修繕部門・工場事務部門など、製造部門の活動を補助する部門。集計された原価は最終的にすべて製造部門に配賦し直す。
- 部門個別費
- どの部門で発生したかが明らかな原価。各部門にそのまま賦課(直課)する。部門専用機械の減価償却費が例。
- 部門共通費
- 複数の部門に共通して発生する原価。占有面積や従業員数など適切な配賦基準で各部門に配賦する。
- 直接配賦法
- 補助部門同士のサービスのやり取りを無視し、補助部門費を製造部門への提供割合だけで配賦する方法。分母に補助部門への提供分を含めない。
- 相互配賦法(簡便法)
- 第1次配賦では補助部門も含めた提供先すべてに配賦し、第2次配賦では製造部門のみに配賦する2段階の方法。
- 部門別予定配賦率
- 部門費予算を部門の基準操業度で割った配賦率。部門の実態に合った基準を使え、差異も部門ごとに把握できる。
