簿記2級のための電卓上級テクニック — メモリーキー・GT・定数計算を使いこなす
2級は「電卓の使い方」で差がつく試験
簿記3級までは、電卓を四則演算にしか使わなくても何とかなります。しかし2級では、製造間接費の配賦、減価償却の月割計算、複数商品の売上原価集計など、計算の量と段数が一気に増えます。途中結果をいちいちメモ用紙に書き写していると、時間が足りなくなるだけでなく、転記ミスという最も悔しい失点を招きます。
電卓には、この「書き写し」をなくすための機能が最初から備わっています。メモリーキー、GT(グランドトータル)、定数計算の3つです。この記事では、それぞれを2級の実際の計算場面に当てはめて解説します。
メモリーキー — 途中結果を電卓に覚えさせる
メモリーキーは、表示中の数値を電卓内部に足し込んだり引いたりして記憶させる機能です。
| キー | 働き |
|---|---|
| M+ | 表示中の数値をメモリーに加算する |
| M− | 表示中の数値をメモリーから減算する |
| RM(MR) | メモリーの合計を呼び出す |
| CM(MC) | メモリーを消去する |
活躍するのは「掛け算の結果同士を足す」場面です。たとえば商品Aが単価200円で30個、商品Bが単価150円で40個売れたときの売上合計を求めるなら、200×30を計算してM+、続けて150×40を計算してM+、最後にRMを押せば12,000円が呼び出せます。途中の6,000円をメモする必要がありません。
決算整理で「加算する項目と減算する項目が混在する」場面ではM−が効きます。当座預金の残高調整などで、加算項目をM+、減算項目をM−と入力していけば、最後にRMを押すだけで調整後残高が出ます。使い終わったら必ずCMでメモリーを消す習慣をつけてください。前の計算の残りが混入するのが、メモリー活用で最も多い事故です。
GT機能 — イコールの結果を自動で合計する
GTは、イコールキーを押すたびにその結果を自動で累積し、GTキーで合計を呼び出す機能です。メモリーと似ていますが、M+を押す手間すらいらないのが強みです。
工業簿記の部門別配賦計算のように「配賦率×配賦基準」を部門の数だけ繰り返して合計する場面や、精算表で修正後の残高を次々に計算して合計を検算する場面で威力を発揮します。各行の計算でイコールを押していくだけで、最後にGTキーを押せば総合計が手に入ります。
注意点はメモリーと同じで、累積のクリアです。多くの機種ではACキーやGTの二度押しでクリアされますが、挙動は機種によって異なります。自分の電卓の仕様を試験前に必ず確かめておきましょう。
定数計算 — 同じ数を掛け続ける場面を高速化する
定数計算は、同じ数値での乗除を繰り返すときに、2回目以降の入力を省略できる機能です。多くのカシオ系機種では乗算キーを2回押して定数を登録し、シャープ系機種では最初の計算をそのまま定数として引き継ぎます。機種による操作差が大きいので、取扱説明書での確認が必須です。
2級で相性が良いのは次のような場面です。
- 製造間接費の予定配賦率を、複数の製品や指図書の直接作業時間に順に掛けていく
- 消費税率や原価率を、複数の取引金額に順に掛けていく
- 200%定率法の償却率を、期首帳簿価額に繰り返し適用していく
配賦率のような「共通の掛け率」を一度登録してしまえば、あとは基準となる数値とイコールを押すだけで次々に答えが出ます。入力回数が減ることは、時間短縮と同時に打ち間違いの確率を下げることでもあります。
機能以前の基本 — 打ち方そのものも見直す
上級機能を活かす前提として、打鍵の基本も一度点検しておきましょう。ポイントは3つです。第一に、利き手と反対の手で打つ練習です。右利きなら左手で電卓を打てるようになると、右手のペンを置かずに計算でき、書く動作と計算の切り替えロスがなくなります。ただし試験直前からの矯正は逆効果なので、取り組むなら学習の早い段階からにしてください。第二に、目線は問題用紙に置いたまま打つブラインドタッチです。5のキーの突起を頼りにホームポジションを覚えると、数字の見間違いによる入力ミスが減ります。第三に、桁区切りの読み方です。3桁カンマを「千・百万」の単位で瞬時に読めるようにしておくと、桁違いのミスに自分で気づけるようになります。
練習への組み込み方
これらの機能は、知識として知っているだけでは本番で手が動きません。
- 今日から普段の問題演習をすべてメモリー・GT前提の手順で解く
- 問題を解く前に「どこでM+を押すか」を10秒だけ考えてから電卓に触れる
- 総合問題の検算をGTで行い、機能の挙動を体に染み込ませる
問題集 での日々の演習を電卓練習の場と捉えて、意識的に反復してみてください。2週間も続ければ、無意識に指が動くようになります。
まとめ
メモリーキーは掛け算の結果同士の加減算、GTはイコール結果の自動集計、定数計算は同じ率を掛け続ける場面の高速化と、それぞれ得意分野が異なります。いずれも2級の配賦計算や決算整理と相性がよく、メモ書きの転記ミスを構造的に減らしてくれます。機種ごとの操作差があるため、必ず自分の電卓で挙動を確認し、普段の演習から使い込んで本番の武器に育てましょう。
