会計マスター

連結会計の世界をのぞく — 親子会社をまとめて1つの決算書にする理由

ニュースで大企業の決算が報じられるとき、その数字のほとんどは「連結」の数字です。トヨタやソニーの売上高として紹介される金額は、1つの会社単独ではなく、グループ全体を合算したものなのです。この「グループ全体の決算書」を作る技術が連結会計です。簿記3級では登場しませんが、公認会計士試験では財務会計論の主役級のテーマになります。今回はその世界を入門レベルでのぞいてみましょう。

親会社と子会社 — 会社はグループで動いている

現代の大きな会社は、1つの会社で完結していることはほとんどありません。製造は子会社A、販売は子会社B、海外事業は子会社C、というように、多数の会社が集まってグループを作っています。

他の会社を支配している会社を親会社、支配されている会社を子会社と呼びます。支配とは、典型的には議決権のある株式の過半数を握り、その会社の経営を実質的にコントロールしている状態です。

法律上は別々の会社でも、経済的には一体として動いている。この実態をどう決算書に映すか、というのが連結会計の出発点です。

なぜ連結が必要なのか — 単独の決算書ではだませてしまう

親会社単独の決算書しかない世界を想像してみてください。そこでは、こんなことが起こりえます。

  • 親会社が子会社に商品を売れば、親会社には売上が立ちます。たとえグループの外に商品が1つも売れていなくても、親会社単独の決算書は好調に見えてしまいます。
  • 業績の悪い事業や借金を子会社に移せば、親会社単独の決算書は見かけ上きれいになります。

つまり、グループ内の取引や資産の付け替えを使えば、単独の決算書はいくらでも良く見せられてしまうのです。投資家が本当に知りたいのは「グループ全体として、外部との取引でどれだけ稼いだか」です。そこで、グループをあたかも1つの会社とみなして作る連結財務諸表が必要になります。

連結の基本発想 — 合算して、内部のやり取りを消す

連結財務諸表の作り方は、細部はかなり複雑ですが、基本の発想は驚くほどシンプルです。

手順発想
1. 合算する親会社と子会社の決算書を単純に足し合わせる
2. 内部のやり取りを消すグループ内部での投資と資本、債権と債務、取引や利益を相殺して消す

ポイントは手順2です。親会社が子会社に商品を売っても、グループを1つの会社と見れば、それは社内の倉庫から倉庫へ商品を動かしたのと同じこと。外部に売れるまでは売上とはいえません。同じように、親会社が子会社に貸したお金も、グループ内で見ればただの資金移動です。こうした内部のやり取りを消していくと、グループが外部との間で行った取引だけが残ります。これが連結財務諸表です。

このほか、子会社の株式をグループ外の株主も持っている場合の扱い(非支配株主持分と呼ばれます)や、子会社を買収したときに生じる「のれん」など、連結ならではの論点も登場します。詳細は学習が進んでからのお楽しみですが、いずれも「グループを1つの会社と見る」という軸から考えると理解しやすいテーマです。

歴史をひとこと — 日本の会計は「連結中心」へ動いた

日本でも昔から連結財務諸表の制度はありましたが、長らく主役は親会社単独の決算書でした。転機となったのが1990年代後半からの会計制度改革で、ディスクロージャーの中心が単独から連結へと大きくシフトしました。子会社を使った損失隠しが問題となった事件などを背景に、グループ全体の実態を開示すべきだという考え方が定着したのです。現在では、上場企業の決算発表も投資家の分析も連結の数字が基本です。ニュースの決算報道が連結中心なのは、この流れの結果といえます。

簿記2級から始まり、会計士試験で本格化する

連結会計は簿記2級の商業簿記で初めて登場し、基本的な連結修正の考え方を学びます。日商簿記1級や公認会計士試験の財務会計論では、成果連結や持分の変動など、より複雑なケースへと発展していきます。公認会計士試験では計算・理論の両面で重要度が高く、実務でも監査対象の多くは連結財務諸表です。まさに「会計士の会計」の中心にあるテーマといえます。

学習のうえでは、連結は「個別の決算書を正確に作れること」が大前提になります。個別の会計処理が曖昧なまま連結に進むと、どこでつまずいたのか分からなくなりがちです。簿記3級・2級の内容を丁寧に固めることが、遠回りに見えて連結攻略の最短ルートです。

まとめ

連結会計は、法律上は別々の親会社と子会社を、経済的な実態に合わせて1つの会社とみなし、グループ全体の決算書を作る仕組みです。単独の決算書だけではグループ内の取引で業績をよく見せられてしまうため、投資家保護の観点から連結財務諸表が必要とされます。作り方の基本は「合算して、内部のやり取りを消す」というシンプルな発想です。簿記3級で学ぶ個別の決算書の知識は、その合算の土台そのもの。今の学習の延長線上に、ニュースで報じられるあの連結決算の世界がつながっています。