監査法人の1日と繁忙期 — 会計士は実際どう働いているのか
「公認会計士は普段どんなふうに働いているのか」。試験勉強の情報は多くても、働き方のリアルは意外と知られていません。この記事では、監査法人で働く会計士の1日と、1年のリズムを紹介します。
監査の仕事は「往査」が基本
監査法人の仕事の特徴は、自分のオフィスではなくクライアント企業に出向いて作業する「往査(おうさ)」が多いことです。監査に必要な資料や担当者への質問はクライアント先にあるため、監査チームは企業の会議室などを借りて数日から数週間単位で作業します。
担当するクライアントは1社ではなく、時期によって複数の企業を行き来します。いろいろな会社のオフィスに出入りし、さまざまな業界のビジネスを内側から見られるのは、監査という仕事ならではの面白さです。近年はリモートでの監査手続も広がり、往査とリモートを組み合わせた働き方が一般的になりつつあると言われます。
若手スタッフのある1日(往査日のイメージ)
繁忙期のスタッフの1日は、おおよそ次のようなイメージです。
| 時間帯 | 内容 |
|---|---|
| 9時頃 | クライアント先に到着。チームで当日の作業予定を確認 |
| 午前 | 担当科目(現金預金、売掛金など)の監査手続。資料と帳簿の突合 |
| 12時 | チームのメンバーと昼食。先輩に質問しやすい貴重な時間 |
| 午後 | 経理担当者へのヒアリング、追加資料の依頼、調書の作成 |
| 夕方 | 進捗をシニアに報告。検出事項があればチームで共有 |
| 帰社後・帰宅後 | 調書の仕上げ。繁忙期は残業になることも |
1日の中心は、担当科目について「帳簿の数字が正しいと言える証拠を集め、調書という文書にまとめる」ことです。地道な作業に見えますが、数字の違和感に気づき、その原因を経理担当者との対話で解き明かしていく過程は、謎解きに似た知的な面白さがあります。
1年のリズム — 繁忙期と閑散期
監査法人の1年には、はっきりしたリズムがあります。日本企業は3月決算が多いため、スケジュールは決算期に大きく左右されます。
- 4月〜5月: 期末監査(最繁忙期) … 決算数値を検証し監査報告書を出す、1年で最も忙しい時期です。残業が続くことも多いと言われます
- 6月〜7月: 株主総会シーズンと一段落 … 期末対応が落ち着き、有給休暇を取りやすい時期になります
- 8月〜9月: 閑散期・研修期 … 長期休暇や研修、翌期の監査計画の策定に充てられます
- 10月〜12月: 期中監査・内部統制の評価 … 四半期対応や内部統制の検証、期末に向けた準備を進めます
- 1月〜3月: 期末前の準備 … 実地棚卸の立会など、決算前に実施すべき手続を進めます
繁忙期の忙しさはよく話題になりますが、その分、閑散期にまとまった休暇を取って旅行や自己研鑽に充てるというメリハリのある働き方ができる点は、監査法人ならではの魅力と言われます。
チームで働くということ
監査は個人プレーではなくチーム戦です。クライアントごとにパートナー、マネージャー、シニア、スタッフからなるチームが組まれ、役割分担しながら監査を進めます。
- 新人はまず先輩の指導を受けながら比較的リスクの低い科目を担当します
- わからないことをすぐ隣の先輩に聞ける環境で、実務を通じて急速に成長できます
- 年次が近いメンバーと長時間一緒に働くため、同期や先輩後輩のつながりが強くなりやすいと言われます
「会計士は一人で黙々と数字に向き合う仕事」というイメージを持たれがちですが、実際にはヒアリングやチーム内の議論など、人と話す時間がかなり多い仕事です。
簿記学習者に伝えたいこと
いま学んでいる簿記の知識は、監査の現場に直結しています。スタッフが最初に担当する現金預金や売掛金は、まさに簿記3級で学ぶ内容です。帳簿の仕組みを理解しているからこそ、「この数字はどの取引から来ているのか」をたどれるのです。
働き方の実像を知ると、勉強の先にある日常を具体的に思い描けるようになります。それは長い受験生活を支える力になるはずです。なお、試験制度など最新の情報は公認会計士・監査審査会の公式サイトで確認してください。
まとめ
- 監査の仕事はクライアント先に出向く往査が基本で、複数の企業・業界を内側から見られます
- 1日の中心は証拠集めと調書作成ですが、対話と謎解きの要素がある知的な仕事です
- 4月から5月の期末監査が最繁忙期で、閑散期には長期休暇も取りやすいメリハリ型の1年です
- 監査はチーム戦であり、人と話す時間が多く、実務を通じて急速に成長できる環境です
数字の向こうにある「働く日常」をイメージしながら、学習を続けていきましょう。
