会計マスター

経過勘定が苦手な人へ — 前払・前受・未払・未収を図解感覚で整理する

簿記3級経過勘定決算整理月割計算

決算整理の中でも多くの受験生がつまずくのが「経過勘定(けいかかんじょう)」です。前払費用・前受収益・未払費用・未収収益という4つの科目が登場しますが、考え方の軸はたった1つ。「当期の分だけを当期の費用・収益にする」ということです。この記事では、4パターンの仕訳と月割計算、翌期首の再振替仕訳までを順番に解説します。

なぜ経過勘定が必要なのか

家賃や保険料、利息などは「1年分まとめて前払い」「後日まとめて受け取り」といった契約がよくあります。しかし決算では、実際にお金を払った日ではなく、サービスを受けた期間・提供した期間で費用や収益を計上しなければなりません。

たとえば当期の12月1日に1年分の保険料を払った場合、当期の費用にできるのは12月から3月までの4か月分だけです。残り8か月分は翌期の費用なので、決算でいったん取り除きます。この「ズレを調整するための科目」が経過勘定です。

4つのパターンを整理する

パターン勘定科目5要素決算での処理
費用の前払い前払費用(前払家賃など)資産費用から翌期分を差し引く
収益の前受け前受収益(前受家賃など)負債収益から翌期分を差し引く
費用の未払い未払費用(未払利息など)負債当期分の費用を追加する
収益の未収未収収益(未収利息など)資産当期分の収益を追加する

資産になる経過勘定

  • 前払費用(前払家賃・前払保険料など)
  • 未収収益(未収利息など)

負債になる経過勘定

  • 前受収益(前受家賃など)
  • 未払費用(未払利息など)

***「前払・未収は資産、前受・未払は負債」***と覚えましょう。前払いはお金を先に払った分だけ後でサービスを受ける権利、前受けは先にもらった分だけ後でサービスを提供する義務、と考えると納得しやすいはずです。

パターン1: 費用の前払い(前払費用)

例: 12月1日に向こう1年分の保険料24,000円を現金で支払った。決算日は3月31日である。

支払時は全額を費用にしておきます。

12月1日 支払時(全額を費用に)

借方(左)

保険料24,000

貸方(右)

現金24,000

決算では月割計算をします。1か月あたり24,000円÷12か月=2,000円。当期分は12月から3月の4か月分(8,000円)、翌期分は4月から11月の8か月分(16,000円)です。翌期分を費用から差し引き、前払保険料(資産)に振り替えます。

保険料24,000円(12か月分)
当期分 4か月 8,000円
前払分 8か月 16,000円
決算整理(翌期分を資産へ振替)

借方(左)

前払保険料16,000

貸方(右)

保険料16,000

これで当期の保険料は8,000円だけが残ります。

パターン2: 収益の前受け(前受収益)

例: 2月1日に向こう半年分の家賃18,000円を現金で受け取った。決算日は3月31日である。

受取時は全額を収益にします。

2月1日 受取時(全額を収益に)

借方(左)

現金18,000

貸方(右)

受取家賃18,000

1か月あたり18,000円÷6か月=3,000円。当期分は2月・3月の2か月分(6,000円)、翌期分は4か月分(12,000円)です。翌期分を収益から差し引き、前受家賃(負債)に振り替えます。

受取家賃18,000円(6か月分)
当期分 2か月 6,000円
前受分 4か月 12,000円
決算整理(翌期分を負債へ振替)

借方(左)

受取家賃12,000

貸方(右)

前受家賃12,000

パターン3: 費用の未払い(未払費用)

例: 決算日において、借入金の利息の当期分3,000円が未払いである。

まだ支払っていなくても、当期にお金を借りていた分の利息は当期の費用です。費用を追加計上し、相手科目は未払利息(負債)とします。

決算整理(当期分の費用を追加)

借方(左)

支払利息3,000

貸方(右)

未払利息3,000

パターン4: 収益の未収(未収収益)

例: 決算日において、貸付金の利息の当期分2,000円をまだ受け取っていない。

まだ受け取っていなくても、当期に貸していた分の利息は当期の収益です。収益を追加計上し、相手科目は未収利息(資産)とします。

決算整理(当期分の収益を追加)

借方(左)

未収利息2,000

貸方(右)

受取利息2,000

翌期首の再振替仕訳

経過勘定は決算のためだけの一時的な科目なので、翌期首に決算整理と逆の仕訳をして元に戻します。これを再振替仕訳(さいふりかえしわけ)といいます。

例: 前期末に前払保険料16,000円を計上していた。翌期首の再振替仕訳を行う。

翌期首の再振替仕訳(決算整理の逆仕訳)

借方(左)

保険料16,000

貸方(右)

前払保険料16,000

決算時の仕訳の借方と貸方をそっくり入れ替えるだけです。こうすることで、前期から繰り越した16,000円が翌期の費用として正しく計上されます。前受・未払・未収の場合も同じように逆仕訳をします。

月割計算のコツ

  1. 支払額(受取額)を契約月数で割って1か月分を出す
  2. 「当期に属する月数」と「翌期に属する月数」を指を折って数える
  3. 前払・前受は翌期分を、未払・未収は当期分を仕訳の金額にする

月数の数え間違いが最大の失点原因です。「12月1日から3月31日までは4か月」のように、開始月を含めて数える練習をしておきましょう。

まとめ

  • 経過勘定の目的は、当期の分だけを当期の費用・収益にすること
  • 前払費用・未収収益は資産、前受収益・未払費用は負債
  • 前払・前受は翌期分を差し引き、未払・未収は当期分を追加する
  • 翌期首には決算整理と逆の再振替仕訳を行う

4パターンを見分ける力は演習量で決まります。下の問題集で月割計算とセットで練習してみましょう。

📚 試験で覚えるべき用語

経過勘定
費用・収益を当期の分だけに調整するための勘定。前払費用・前受収益・未払費用・未収収益の4つ。
前払費用
支払った費用のうち翌期に属する分を表す資産の勘定科目。前払家賃・前払保険料など。決算で費用から差し引いて計上する。
前受収益
受け取った収益のうち翌期に属する分を表す負債の勘定科目。前受家賃など。決算で収益から差し引いて計上する。
未払費用
当期に発生しているがまだ支払っていない費用を表す負債の勘定科目。未払利息など。決算で当期分の費用を追加計上する。
未収収益
当期に発生しているがまだ受け取っていない収益を表す資産の勘定科目。未収利息など。決算で当期分の収益を追加計上する。
再振替仕訳
翌期首に、前期の決算整理仕訳と借方・貸方を逆にして経過勘定を元の費用・収益の勘定に戻す仕訳。
月割計算
支払額や受取額を契約月数で割って1か月分を求め、当期分と翌期分の金額を月数で配分する計算。開始月を含めて月数を数える。